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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

広告だけではセールスにつながらない 大切なのは営業部門との価値創造

笹木隆之氏(TBM)

    BtoB企業のクリエイティブ活用の極意

    🗹ブランディング目的の広告は事業成長のKPIのひとつとして捉える

    🗹広告だけでは売上につながらないと考える

    🗹クリエイティブには機能、情緒、環境の3つの価値を盛り込む

BtoB企業の潮流 クリエイティブとマーケティング

事業成長につながるBtoB企業の広告クリエイティブ活用についてお話をする前に、まずは昨今のBtoB企業を取り巻くマーケティングの潮流について考えたいと思います。

一言でBtoBといっても、多様な業種・業態があることを前提に、皆さんが日常生活の中で接する機会が多いBtoC事業のセールス・マーケティングとは何が異なるのかを考えてみましょう。

まず、BtoB事業はBtoCと比べて1件あたりの客単価が高い傾向にあること、また成約に至るまでに決裁者が複数名いることが大きな違いです。LTVを踏まえた大きな金額を動かし、何人もの担当者と話をする機会があると言えます。

一方でコロナ禍によるDXの推進という観点でのセールス・マーケティングの変化については、わかりやすいところで言うと、BtoCと同じような潮流があります。対面の営業からオンラインを中心にした営業への変換。そして、マーケティング活動においても新規獲得からデータを活用した顧客の育成へと戦略がシフトしていることは、皆さんも感じているところでしょう。

また、これはコロナ禍によって始まった傾向ではないですが、BtoB企業は、企業のブランド力を重視する傾向があります。マス向けのテレビCMや新聞広告など、広告クリエイティブを活用して、コーポレートブランディングに注力する企業も増えてきています。

つまり、現在のBtoB事業のセールス・マーケティングのひとつの潮流として言えるのは、デジタル化したセールス部門とブランディング目的としての広告クリエイティブの統合。それによって、より一層の事業成長につなげようとしている企業が多いという印象です。

ブランディング目的の広告は売上に貢献できるのか

セールス・マーケティング活動において、これまで営業担当が属人的に行っていた顧客との関係構築をマーケティング・オートメーションやCRMツールを使って分業型で回していくことの重要性についての理解は、BtoB界隈で高まっているところです。売りにつながる効率的なマーケティングをしようという考えですよね。TBMも注力しながら、社員募集を強化している領域です。

一方、BtoB事業を展開する企業の広告クリエイティブ活用は従来、マーケティング目的というより、コーポレートブランディングの目的で活用されることが多いので、セールスや事業成長に直結するとは考えにくいのではないか、という意見をお持ちの方もいらっしゃると思います。

この点について私は、コーポレートブランディング目的としての広告クリエイティブだとしても、何をKPIとするかでセールスにつながるか否かが変わると考えています。「広告でセールスにつなげるのだ」、あるいは「事業成長に貢献するための広告を制作するのだ」というように、コーポレートブランディングを売上につなげるための手段として考え、「事業成長のためには広告も必要。それがセールスに直結しないブランディング目的のものだったとしても、この広告活用が事業成長までのひとつのKPIになる」と、方法論的に考えるということです【図1】。

図1 ランディング目的の広告は、事業成長のためのKPIになる

私はBtoBのマーケティングにおいて、コーポレートのブランド確立は不可欠だと考えています。ですが、セールス・マーケティングにダイレクトにつながらない場合もあると思っています。BtoBで事業を展開している企業にとって必要な意識は、ブランディングで得られる効果を事業成長のためのひとつのKPIとして捉えることなのかもしれません。

TBMの認知拡大当初はメディア露出がメイン施策

TBMの事業内容についての紹介が遅れてしまいましたが、当社は2011年創業、LIMEX(ライメックス)という新素材のビジネスから始まったスタートアップです。石灰石が主原料の、プラスチック・紙の代替製品を成形、またリサイクルが可能なものです。当社はこのような素材の開発だけではなく、開発した素材を成形した製品の販売。そして、販売している製品を回収してリサイクルを行う、「新素材の開発」と「資源循環」を主な事業としています。

また最近では新規事業として、「MaaR」というオフィスなどで使われているプラスチック製品やLIMEX製品を回収し、そのオフィスに環境配慮型の製品を提供するサブスク型のサービスも行っています。

TBMがマーケティング・コミュニケーションで最初に注力したのはLIMEXの認知形成とブランドイメージの醸成。信頼性高く、そしていかにイノベーティブな素材なのかということを、広くビジネスパーソンに伝えることでした。

そこで活用したのは、広告ではなく『カンブリア宮殿』などの経済番組や...

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