メディアやSNSでさまざまな食の情報発信や企画開発をされているフォーリンデブはっしーさんと、食品広告にも携わる電通のコピーライター鈴木晋太郎さんが、食にまつわる「そのことばがある前と後」について語りました。

桃屋の「ごはんですよ!」他と一線を画すネーミング
はっしー:鈴木さんは、コピーライターとして食品にまつわるクライアントを数多く経験されていますね。そんな今回のテーマは、僕たちなりに選ぶ「おいしさの表現で、人々の価値観を変えてきた言葉たち」です。
鈴木:食に関わる言葉の役立ち方はSNSの登場によって、かなり多様化している気がしますよね。「食べたくなるかどうか?」という視点で見た時に、以前からすごいと思っていたのが、桃屋の「ごはんですよ!」です。これって、「お前は、ごはんじゃない!」と思いませんか? 海苔の佃煮なのに、そう書くことでご飯のお供の代表選手みたいになっている。その上で、他の海苔の佃煮たちとも一線を画しているわけです。
はっしー:食べた後の行動までイメージしやすいですよね。海苔の佃煮を食べたら「これは、ごはんが必要でしょ!」みたいな。ご飯のお供だからこそ、ご飯を呼び寄せる。芯を食ったネーミングな気がします。
鈴木:一番強いものに便乗している感じがありますよね(笑)。何よりも、ご飯を見ると真っ先に思い出すようになっているのがすごいです。
コカ・コーラの泡には「青春」が詰まっている
鈴木:もうひとつ挙げたいのが、「こんなに楽しいのに、なんで泣きたいんだろう。」というコカ・コーラのコピー。青春に憧れていた高校生の頃、このフレーズを見て「なんて羨ましいんだ」と思っていました。「あの人たちって、楽しすぎて、逆に泣きたいんだ?」と思って……(笑)。コーラのはじける泡の楽しさと同時に、「この楽しさも、もうすぐ消えるんだ」というはかなさ。炭酸飲料の泡って、そういう2つの心情が同居したシズル感を持っていますよね。
はっしー:まさに青春ですね!そうすると、青春を思い出すたびにコカ・コーラがチラつく、みたいなことが起きるのかもしれないですよね。