2020年にマーケティング活動における強力なデジタルシフトを宣言した資生堂。流動的に変化し続ける顧客のニーズをいかに捉え、どのように新たな美容体験を生み出し、エンゲージメントを深めているのか。DX推進活動の開始から現在までの過程と、マーケティング戦略の変革について解説する。
※本記事は、2022年11月16日に行った「宣伝会議サミット2022」のセッションを記事化したものです。
アクセンチュアと会社設立 美をよく知るデジタル・IT集団
2022年に資生堂は創業150周年を迎えました。私たちは、企業ミッション「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、次の150年先も世界中の人々が美しく、自分らしく輝き、希望に満ちた世界を創造していきたいという使命を持っています。「美」の力を通じて、「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現のために、化粧品事業での利益拡大だけではなく、お客さまをはじめとしたさまざまなステークホルダーとの共創をベースに社会価値の創造を目指しています。
また資生堂は2030 年に「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」として、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現することをビジョンに掲げています。自分らしい健康美とは、画一的ではない、バリエーション豊かな美のことです。
このビジョンの実現のために当社では2021年、DXをより加速化するため、アクセンチュアと連携して資生堂インタラクティブビューティーという合弁会社を設立しました。新しい美容体験の提供、グループ全体の基幹システムの標準化・効率化、そして美をよく知るデジタル・IT集団の形成・強化が主な目的です。
顧客ひとりにつきIDをひとつ付与 開発からマーケ、営業まで効率化
DXを推進し、私たちが進めている新しい美容体験「テーラーメイドなオンリーワン体験(一人ひとりのニーズにあった美容体験)」をご紹介します。
お客さま個々にあったオンリーワンな体験を実現すべく、2022年9月に「Beauty Key」という会員サービスをローンチしました。これまで小売店ごとに把握していたお客さま情報を、One IDでお客さまごとに小売店を横断して把握、管理することを可能にしました。このOneID化によって、お客さまは肌診断の結果やカウンセリングの履歴、お気に入りのブランドからの美容情報などがアプリ内で一元化されるため、場所や時間を選ばず、自分にあったシームレスなサービスを受けられるようになります。
そして資生堂は「Beauty Key」によって集約されたデータを活用し、商品開発力の強化やお客さまが求めている商品を予測し...