時代に応じて飲酒文化も変化している。若者のアルコール離れが進んでいるとも言われる中、宝酒造はスパークリング清酒「澪」と松竹梅「昴」の2商品を軸に、日本酒市場の開拓を行っている。商品第二部の田和綾子氏がそれぞれの戦略を話す。
縮小する市場の活性化を狙い 日本酒を“飲まない層”を開拓
日本酒市場は1970年代から縮小し続けており、ピーク時の1975年と比較すると2018年は28%ほどの市場規模になっているという※。このような状況の中、日本酒や焼酎をはじめ独自の技術力を生かした商品を開発する和酒メーカーである宝酒造では、新たな価値・ベネフィットを持つ商品を開発・育成していくことで日本酒市場全体の活性化を目指している。
宝酒造 商品第二部の田和綾子氏は、そのような市場活性化を担う新たなプロダクトとして、スパークリング清酒「澪」と松竹梅「昴」の2つの事例を挙げ、それぞれのブランド開発の経緯と、戦略について説明した。
若年層・女性をターゲットに日本酒の固定観念を覆した「澪」
スパークリング清酒「澪」が発売されたのは2011年6月。約6年間もの開発期間を経て生まれた。
「日本酒市場の縮小の理由のひとつに、日本酒の飲酒人口の減少があります。その傾向は若年層で顕著に見られており、新たな世代に向けた日本酒が必要との考えから、2000年代半ばに『澪』の開発はスタートしました」と田和氏は話す。そこで、ヒアリングを重ねたところ、若年層の嗜好として「低アルコール」「甘口」「飲みやすさ」といったキーワードが見られた。また、従来の日本酒に対して若年層は、「クセが強い」「敷居が高い」「二日酔いする」といったマイナスイメージを抱いていることも判明した。
「このイメージを変える商品ができれば、日本酒を飲んでこなかった若年層が日本酒を飲む“きっかけ”をつくることできるのではないか。そして、それが新しい日本酒の価値となり、ひいては市場の拡大につながると考えました」と田和氏。
こうして企画・開発された「澪」は、アルコール分は5%で一般的な日本酒の約3分の1の「低アルコール度数」、「お米うまれのやさしい甘み」と「ほどよい酸味」が特徴のスパークリング清酒として誕生した。発売時はこの商品特徴をしっかりと伝えるため、料飲店、百貨店、通販ルートに限定し販売を開始した。
その結果、発売以降「フルーティーで飲みやすい」「あまり日本酒を飲まない私にも飲める」といった声が届いており、日本酒を「私が飲むものではない」と捉えていた人々にとって...