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REPORT

「CMO X」分科研究会レポート2022

「マーケターの集合知で日本に突き抜けた成長力を」のスローガンのもと、2014年11月に発足した「CMO X」。2020年4月からはマーケターの、マーケターによる、マーケターのための組織として、運営の在り方を刷新。毎年ボードメンバーを選出し、そのメンバーが中心となって年間の活動を設計・実行してきました。

またボードメンバーは自身が考えるマーケティングの課題について、同じ問題意識を持つメンバーと集まって分科研究会を結成。半年かけて議論を重ね、その成果は11月9日、10日の2日間かけて開催される「CMO X FORUM」の場で発表されます。「CMO X FORUM」の開催を前に、5つのチームがどのような課題意識を持って議論を重ねてきたのか。その途中経過をレポートします。


マーケティングと新たなテーマの掛け合わせで マーケターの役割は、もっと拡張していける!

「CMO X」では2022年のボードメンバーを務める5名が中心となり、分科研究会を結成。約半年にわたり、ボードメンバーがリーダーとなって各分科研究会での議論を重ねてきました。各チームが設定したディスカッションテーマからは、マーケティングを取り巻く現代の課題が見えてきます。

「CMO X」のボードメンバーがリーダーとなって運営する分科研究会の取り組みは今年で3回目を迎えます。コミュニティの名称に「X」と入れているのは、マーケターが従来のマーケティングの領域に閉じこもっていては、産業界のなかで期待される役割を果たしきれない環境が生まれているのではないか、との仮説があってのこと。

マーケティングと産業界、社会の課題を掛け合わせるなかに、これからのマーケターに期待される役割のヒントがあるのではないか、との考えのもと、各分科研究会では「CMO X 〇〇〇」という形で、マーケティングの役割の拡張につながる、マーケティング外のテーマを設定しています。

「CMO X」のFounderである加藤希尊氏は、「先の見えづらい市場においてマーケティングに求められる役割の広がりを感じる。マーケティングは経営ごとになり、文化の醸成や、ダイバーシティ&インクルージョン、BtoBマーケティングなど、マーケターには幅広い知識が求められるようになっている。分科研究会では時代に合った価値観を企業同士で養う共創の時代を開拓していきたい」とコメントしています。

2022年のボードメンバー
各研究会のテーマの狙いとは?

    一般社団法人
    渋谷未来デザイン
    理事 事務局長
    長田 新子氏

    「CMO X」の活動として、渋谷の街で新たなカルチャーを生むことをテーマに社会実験を行ったのは3年前(2019年)。この活動は、公共空間の再構築における仕組みの具現化にも寄与しました。マーケターとの出会いから様々なアイデアを生み出し、具体的な共創事業をカタチにしてきた自分としては、街づくりや社会課題解決においてもマーケティングは必要だと思っています。社会の流れや環境の変化に常に敏感であるマーケターだからこそ、枠を超えて未来につながるようなことに貢献できたらと思っています。

    日本HP 経営企画本部
    マーケティング推進部
    部長
    甲斐 博一氏

    マーケティングと経営はどれくらい一体化しているのでしょうか?幸いにも20年以上にわたってB2C/B2Bともに多くのマーケティングの経験をさせていただいた中で、ずっと抱き続けているひとつの課題。かのコトラーは、Marketing is Everythingとおっしゃるが、どれくらいそれが企業に浸透しているのでしょうか。

    多くのマーケティング施策は可視化できるようになったことで、経営側から見たマーケティングの存在にどれくらいの変化が生まれているか、そして今後はどうなるべきか、そんなテーマにぜひ皆さんと一緒に取り組んでみたいと思います。

    ニューバランスジャパン
    マーケティング部 ディレクター
    鈴木 健氏

    コロナ禍を経て、デジタル化が加速すると同時に、旧来の伝統的な価値も見直されて、新しい世界が広がりつつあるなかで、さらに進化したマーケティングの可能性について各界で活躍される現役マーケターの方とリアルに議論ができるのを楽しみにしております。XはExperienceのXでもあり、未知数のXでもありますので、是非未知の体験の模索にチャレンジしたいと思います。

    ANAホールディングス
    執行役員 グループCDO 兼
    グループDEI推進部長
    種家 純氏

    急速に変化する価値観や行動様式、ビジネス環境において、企業が持続的成長と新しい価値創造、社会と人の豊かさに貢献するためには「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)」のような基盤を迅速かつ柔軟に整えることが重要です。そのためのキードライバーが、マーケティングのエッセンス、マーケターの集合知ではないでしょうか。CX(顧客体験)とEX(従業員体験)を高め、「共創の場としての職場」を実現するための議論を皆様とさせていただければと思います。

    トリドールホールディングス
    執行役員 兼 CMO 兼
    マーケティング部長
    丸亀製麺 取締役
    マーケティング本部長
    南雲 克明氏

    マーケターの役割、マーケターに対する期待は、従来のマーケティング領域やCX・DXの枠にとどまることなく、生活者起点・顧客起点で戦略・ビジネス・組織を再構築し、改革(Business Transformation)の画を描き、リードすることに拡がってきています。マーケターが「共想」し「共創」する「CMO X」ならではの視点で、実践を意識した新たな示唆や価値提案ができるよう、楽しんで議論を深めていきたいと思います。



CMO X CULTURE

魅力はコミュニティの熱量?
マーケターと「カルチャー」のこれからの関係

長田新子氏がリーダーとなるチームでは「CMO X CULTURE」をテーマに議論を重ねている。

長田氏は前職のレッドブル時代に「CMO X」の活動に参加。当時から音楽やストリートスポーツなど、カルチャーを支援するなかで、そのカルチャーのなかにある「シーン」を捉え、レッドブルの飲用シーンを開拓。単なるスポンサーシップとは異なるブランドとカルチャーのコラボレーション事例を国内でつくったパイオニアだ。

現在は、産官連携しての渋谷の街のブランド力強化の取り組みを行っており、その文脈においても捉えどころのない「カルチャー」をテーマにマーケター同士で議論をしたいとの目的で発案された。

企業はプロダクト・サービスのマーケティング活動を通じて、新たなライフスタイルを提案・浸透させてきた。それゆえ、広告そしてプロダクトが、その時々の文化をつくってきたと言っても過言ではないかもしれない。

しかしプロダクトの機能だけでなく、その背後にあるブランドとしての思想や価値観も含めて、生活者がブランド選択の指針とするようになっている今、瞬間的な消費トレンドという意味での文化ではなく、社会資産としてストックされる文化への貢献も検討するべきではないか。そんな問題意識の提示のもと、メンバー同士のディスカッションは始まった。

分科研究会では「文化」、「カルチャー」という言葉は人によって定義も異なるため、各自の考える文化の定義について発表しながら、議論の方向性をすり合わせていった。

葦原氏からはマーケティングが関わる文化には、文化事業(芸術、スポーツなど)、社内文化(風土、バリュー)、新しい文化(世界観、価値観)の3つがあるのではないか?との提示があった。

これに対し、メンバーからは「文化事業とお金を稼ぐことは相容れないという意識が強いのでは?」「従来の協賛とは違い、レッドブルの事例のように双方がWin-Winとなる文化事業の主体と企業の関わりを検討できないか?」といった意見が出てきた。

文化創造の拠点となる学校法人に所属する世耕氏、スポーツの担い手側から企業の協賛・協力のための働きかけも行う葦原氏、スポーツさらに最近ではVTuberコラボなど、企業のマーケティング活動のなかで、社外の文化との連携を模索する角田氏、ファンベースの専門家の津田氏と多様なメンバーが集う研究会。「企業が文化に感じる魅力とは、そのコミュニティの熱量にあるのでは?」という観点から、議論が進められている。

一般社団法人渋谷未来デザイン
理事 事務局長
長田 新子氏

一般社団法人
日本ハンドボールリーグ
代表理事
葦原 一正氏

学校法人近畿大学
経営戦略本部 本部長
世耕 石弘氏

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