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付加価値の正体とは? コモディティ時代に選ばれるブランド

“差別化”という発想を脱する新時代の「買う理由」のつくり方

永井孝尚

コモディティ時代に選ばれるブランドをつくるためには、差別化という発想以前に、ものを買わなくなった生活者の消費ニーズを喚起し、購買の動機づけをする必要がある。『100円のコーラを1000円で売る方法』の著者が、「買う理由」をつくり上げるプロセスを解説する。

ブランドは、意図的につくろうとしてもつくれない

広告宣伝に大金を投入しながらも、大失敗した例は枚挙にいとまがありません。例えば、ヴァージン・コーラ。「ヴァージンをコカ・コーラと同じくらい有名にしたい」と考えたリチャード・ブランソンがカナダの会社と協力し、世界各地で販売を開始、派手なプロモーションを展開しました。しかし本国の英国でもシェアは3%に留まり、コカ・コーラの牙城を崩すことはできずに多くの市場から撤退しています。派手な広告や宣伝で注目を集めても、ブランドは構築できないのです。

ブランドは消費者の頭の中に「ブランド=〇〇〇」と認識されることでつくられます。かつては大量の広告と宣伝を駆使してこのような認知をつくり上げることが可能でした。しかし現代では、情報が氾濫しています。総務省が発表した「情報流通インデックス」によると、流通情報量のうち生活者が知覚する消費情報量は、わずか0.004%。2万5000件中1件です。広告や宣伝は、氾濫する情報の中に埋もれてしまうのです。

仮に圧倒的な物量作戦で目立っても、まだハードルがあります。ネット社会の現代は、消費者は企業よりも多くの情報を持ち、より賢くなっています。現代は企業のありのままの姿が消費者に晒される「透明な時代」なのです。消費者は実態が伴わない広告や宣伝には動かされません。

ではこのような時代、企業はブランドをどのように考えるべきなのでしょうか?本来、ブランドとは実績であり、実績とは事実の積み重ねです。企業は消費者に対して、新たな価値・顧客満足をつくり続けていくことが問われているのです。この蓄積がブランドをつくり上げます。現代では、よりピュアな形でブランドの本質が問われているのです。

低迷する白物家電市場で、躍進する黒船家電メーカー

しかし一方で、こんな声があるかもしれません。「日本では多くの市場がコモディティ化しており、差別化しようにもすぐに真似されてしまう。こんな市場ではブランドづくりは難しい」。

そこでコモディティ化が進む業界の筆頭とも言える国内白物家電市場で、ブランドづくりに成功している事例を紹介します。それは「黒船家電」と呼ばれる海外家電メーカー。日本の白物市場で黒船家電メーカーは成長し、確たるブランドを築いています。そこで黒船家電の躍進が著しい電気掃除機市場で何が起こっているかを見てみましょう。

この掃除機市場では、ダイソン、アイロボット、エレクトロラックスといった海外メーカーが成長しています。

ダイソンは、目詰まりがなく世界で唯一吸引力が落ちないという独自の「サイクロン技術」を生かし、「屋内アレルギーの最大の原因であるハウスダストを確実に取り除く」という価値を、アレルギーに悩む人たちに提供しています。

自動お掃除ロボット「ルンバ」を販売するアイロボットは、独自の「ロボット技術」を生かし、「スイッチポンで掃除が完了する」という価値を、掃除の手間をかけずに床をキレイにしたい人たちに提供しています。

北欧の電機メーカーエレクトロラックスは、静音技術を生かし、「音を立てずに掃除できる」という価値を、家族が寝ていたりテレビを見ていても掃除をしたい人たちに提供しています。

いずれの企業も、コモディティ化が進む白物家電市場で自社の強みとなる独自技術を生かし …

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