発売から今年で20周年を迎えたカゴメ「野菜生活100」と、この3月に発売になったばかりの「ダノンオイコス」。コモディティ化の著しい、食品・飲料市場において競合との差別化をどのように図っているのか。新たな切り口で顧客、市場の創造を試みる、それぞれのブランドが提供する“付加価値”とは。

(左から)カゴメ コーポレート・コミュニケーション本部 メディアコミュニケーション部 課長の西村晋介氏、ダノンジャパン マーケティング部 シニアイノベーションマネジャーの渡辺愛咲氏
競合は“ジュース”だけではない
――コモディティ化する市場で、どのような付加価値を重視していますか。
西村▶ 野菜生活100は今年で20周年を迎えましたが、商品を取り巻く環境は発売当時から激変しました。当時は、まだそれほど健康を訴求する商品がなかった時代であり、トマトジュースや野菜ジュースは“健康に気を遣うおじさんが飲む物”というイメージを持たれていました。そうした中、セルフメディケーションという考え方が浸透し始め、女性やお子さんなど“みんなにおいしい”野菜飲料を提供したいという想いから、野菜生活100が誕生しました。
渡辺▶ ヨーグルト市場もコモディティ化が進み、店頭での販売価格は全体的に低下傾向にあります。そうした中で、今年の3月に新ブランドとして発売したダノンオイコスは、高価格帯の商品です。乳原料を既存製品の約3倍使っていることや、高機能の遠心分離機で水分を飛ばすことで、濃密でなめらかな食感とマイルドな味わいを実現していることが特徴です。ダノンオイコスの発売と同時期に競合他社や大手流通のPB商品も水切りヨーグルト製品を発売したので、業界全体が盛り上がっています。その流れに乗ることはできたのですが、数ある競合商品の中からどのようにして抜きん出るかが今後の課題です。
西村▶ 野菜生活100は健康軸における競合商品の多様化に伴い、2006年から、野菜・果物などの植物が持つ「ファイトケミカル」を野菜の色というテーマで訴求する方向に、ブランド・エクステンションしていきました。その後は沖縄産シークワーサーや熊本産デコポンなど、付加価値の高い特産果実を使ったラインナップの拡充、ニュースになるような話題づくりにも注力しています。昨今、コンビニエンスストアの惣菜や外食メニューで野菜摂取価値を訴求する商品が増えている中、20周年を迎える今年は、野菜摂取価値をより多くの人に理解してもらうべく、“コップ一杯(約200ml)で1食分の野菜が摂れる”という内容にリニューアルしました。常に話題性のある情報を発信し、拡大する健康市場の中で埋もれないようにと考えています。
渡辺▶ 野菜を摂る手段が多様化している中で、ジュースであることには、どのような価値があるんですか。
西村▶ 野菜のような植物には「細胞壁」と呼ばれる“壁”があり、その“壁”を壊さないと、つまりよく噛んで食べないと、細胞内の栄養素を体が十分に吸収することができません。ですが、ジュースにすることでその“壁”が壊れるので、リコピンやβ-カロテンのような加工しても壊れることのない野菜の栄養が体に吸収されやすくなるという利点があります。この“栄養吸収率が高い”というジュースならではの価値を、今年のコミュニケーション活動の重要な訴求点に置いています …