トップはコロナ禍で何を語るべきか? 戻るべきは経営の原点
コロナ禍で先行き不透明な今、経営トップの言葉は企業の道しるべともなります。各ステークホルダーの心を離すことなく、事業を存続していくためにその発信力が試されています。それを裏で支える広報はなにを押えるべきか。有事のトップ発信におけるもつべき視点を整理します。
トップの発信 支える広報
トップの発信がソーシャルメディア上でも活発になっている。トップの本音、ありのままの姿を伝えられるのがソーシャルメディアの利点。発信力の強いメッセージはどんなものか、事例で見ていく。
外出自粛が広まる中、在宅勤務やリモート環境でのコミュニケーションに、SNS活用を進める企業が目立つようになった。緊急対応が迫られる際に、とりわけ各社トップの発信が注目されることも多い。そこでトップを取り巻くSNS活用の事例を見ていくことにする。
どの事例にも共通するのは、「ありのままの姿」を感じさせ、編集されずに直接伝わるメッセージということだ。
2020年10月、電気自動車メーカー・テスラの広報部門が解散になったことを複数のメディアが報じた。同社イーロン・マスクCEOのTwitterフォロワーは4600万人以上を数え、テスラの企業公式アカウントがトータルで抱えるフォロワー数よりもはるかに多い。
また、ひとたび同氏が発信すれば、そのメッセージは編集されることなく、またたく間に世界に情報が拡散し、主要メディアが束になっても、マスクCEOの発信力を凌ぐことはない、というのが広報部門解散の理由だと分析されている。
もっとも、約782万人のフォロワーを持つテスラ公式Twitterアカウントや、チャンネル登録者数180万人以上の公式YouTubeアカウントは変わらず運用されていることから、広報部門が担うメディアリレーション部分がなくなったということのようだ。テスラの株価は2020年1年で8倍以上に上昇、時価総額は9月の段階でトヨタの2倍になった。
2021年1月、テスラはマスク氏にネット上で多数寄せられる苦情や攻撃に対応するソーシャルメディア担当を募集している。ここで注目すべきは、広報部門がなくなったことよりもむしろ、トップのSNS自体を広報と位置づけたことだろう。
2020年3月、大手ホテルチェーンのマリオットは、同社ソレンソンCEOの動画メッセージを公式Twitter上で公開し、大きな注目を集めた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、ホテルビジネスに深刻な影響が出ている中での、世界に向けたトップのメッセージだった。
単なる客観的な状況説明ではなく、自らのキャリアを振り返り、涙ぐみながら、かつて経験したことのない厳しい状況であることを伝えつつ、それでも...