トップはコロナ禍で何を語るべきか? 戻るべきは経営の原点
コロナ禍で先行き不透明な今、経営トップの言葉は企業の道しるべともなります。各ステークホルダーの心を離すことなく、事業を存続していくためにその発信力が試されています。それを裏で支える広報はなにを押えるべきか。有事のトップ発信におけるもつべき視点を整理します。
トップの発信 支える広報
2020年4月、分社化、並びにトップ交代を行った中部電力。コロナという激動の時期と重なった大きな変化。この機会をグループの一体感醸成へのステップに変えた、思いっきり!中電プロジェクトの裏側を聞いた。
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2020年4月から送配電と販売事業を分社化した中部電力。持株会社、事業会社含め3社の新体制を敷く。併せて5年ぶりとなるトップ交代で林欣吾氏が社長に就任した。分社は社員にとっても大きな変化であり、不安も募りやすい。同社では「思いっきり!中電」を合言葉に、グループの一体感を醸成するため、「トップの動画」を活用したプロジェクトを進めている。
「分社化した3社のトップの話を、社員に届ける機会をつくることはできないか」。林社長からの広報への打診からプロジェクトはスタートした。「林自らが、自分の言葉で伝えることを重視していました。広報はそれをサポートしつつ、“伝える”だけでなく、社員一人ひとりの業務に落とし込むところまでストーリーをつくるべきと考えました」。
プロジェクトで目指したのは❶社長の人柄を知ってもらう ❷3社トップの座談会を通じてグループとしての一体感を感じてもらう ❸3社トップが未来への宣言を行う ❹各職場の所属長をファシリテーターとしたワークショップを開催する。この4つを軸にストーリーを設計した。
❶では、従業員から寄せられた26の質問に林社長が回答する動画を作成した。「林自身のパーソナルな部分を伝えることで、その後の発信もより社員が身近に感じられるのではないかと考えました。せっかく社長自身が話す言葉なのに、広報が原稿をつくり込んでしまってはもったいない。熱がこもっていないように見えます。そう考え、あえて原稿はつくらず1発撮り。林の人柄を伝えることができました。動画は人間性を表すのにとてもいいメディアだと感じています」。
撮影前に「編集できるので大丈夫です」と一声かけることで、力みすぎない、ありのままの姿、言葉を引き出すことができたという。「最初は林も不安があったと思います。広報としても、社長の伝えたい言葉を丁寧に抽出し、編集しようと努めました。それが功を奏して、その後の撮影では他の参加者に社長自ら『しっかり編集してくれるからいつも通りで大丈夫ですよ!』と声をかけてくれるようになりました。広報が編集する意味を実感しました」。
❷では、林社長の希望でもあった...