ネタの閑散期こそPRのチャンス。この定説は変わらない。一方、今年はワクチン接種や五輪など重要イベントが控える。さらに、いつ予定の変更があってもおかしくない。複数のシナリオを用意しておくことが肝要だ。
2020年を振り返ると、「新型コロナに始まり、新型コロナに終わった」観がある。誰にとっても、年始に思い描いていたスケジュールが、これほど狂った年はなかったのではないだろうか。2021年もパンデミック(世界的大流行)の終息が見えない中で年間計画を立てにくい状況が続いている。一方で、不確実性が高まっている時ほど、事前の備えが必要だ。今回は、記者の季節ごとの繁閑に着目して、広報がネタを売り込む最適なタイミングについて考えてみたい。
長期休暇が広報のタイミング
記者にとっての至上命題は、言うまでもなくスクープを抜く(あるいは抜かれない)ことだ。一方で、同僚や上司から「できる記者だ」という評価を受けようと思えば、ニュースがない日に紙面を埋めることも重要な仕事になる。旬の話題や流行などを見つけて「街ネタ」を書いたり、企業や役所の発表を組み合わせて「傾向モノ」「まとめモノ」などと呼ばれる大きめの記事に仕立てたりする器用さが記者には求められるのだ。
広報がネタを売り込むのに最適なのは、記者がそうした「埋め草」を探しているタイミングだろう。では、記者がネタに困るのはどんな時なのか。
実は、全国紙に掲載される記事の量は季節によって変動する。おおむね、記事が多い時期はニュースが豊富で、少ない時期はネタ枯れが起きていると考えて良い。ニュースが少ない時期にはページ数自体を減らすこともあるが、筆者の経験から言えば、だからといって原稿不足が解消されるわけではない。
実際に、データベース「日経テレコン21」に収録された記事の本数を見てみよう。1日当たりの記事数をグラフ化すると、「年末年始」「大型連休がある5月」「お盆前後」に減っていることが分かる。2020年は新型コロナの影響があったのでイレギュラーだが、2019年も傾向はほぼ同じだ(図)。
筆者作成
ここから分かるように、ネタ枯れはいずれも休暇シーズンと重なる。社会全体で政治・経済活動の水準が一時的に下がるため、ニュースも減るのである。中でもお盆前後はその傾向が強く、昔から「夏枯れ」と呼ばれて記者を悩ませてきた。朝日新聞が夏休みに全国高等学校野球選手権大会を開くのも、この夏枯れ対策の側面がある。ニュースがないならつくってしまえ、というわけだ。
この時期には、記者たちも交代で休暇を取る。特に最近は...