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記者の行動原理を読む広報術

ネットに接近する「テレビ」 調査報道にシフトしていく「新聞」

松林 薫

情報技術の進歩により、メディアの情報の発信方法や質は大きく変化。これまで旧メディアと一括りにされがちな新聞とテレビであったが、両者の違いは、このコロナ禍でさらに広がっていくことだろう。

コロナのパンデミックは、構造不況業種だった新聞とテレビも直撃した。一方、オールドメディアの苦境を尻目に影響力を拡大しているのがネットだ。中でもSNSは世界保健機関(WHO)が「インフォデミック」を警告するほど猛威を振るっている。今後の広報戦略を考える上で、こうしたメディアの変化の方向性を見極める必要があるが、ここ数カ月で大きな流れは見えてきた。一言で言うなら「ネットに接近するテレビ、調査報道にシフトする新聞」だ。

ネットに接近するテレビ

民放テレビについて言えば、ワイドショーや報道番組が、ますますSNSやネットニュースの影響を強く受けるようになった。元来、両者とも広告モデルなので行動原理は似ている。人々の直感や感情に訴える、分かりやすい情報を優先して伝える傾向があるのだ。コロナ禍においても著名人の感染や、自粛要請に応じない人や業界への怒りなどにフォーカスする点では一致している。

ただ最近は、テレビがSNS上の話題を報じたり、個人がSNSで発信したコメントをそのまま引用したりするケースが増えた。コロナ感染防止の観点から現場取材がしにくくなっていることに加え、経費を抑制しなければならなくなったという事情もあるだろう。

一方、ネットの側にも変化が生じている。影響力が強まったことで負の側面にも焦点が当たりやすくなったためだ。例えばリアリティー番組の出演者がネット炎上を苦に自殺した事件を巡っては、SNS上の誹謗中傷を規制すべきだとの声が高まった。名誉毀損を巡る裁判でも、被害者に有利な判決や和解が相次いでいる。プラットフォーム側も対応を迫られており、徐々に「行儀の良いメディア」に変わっていく。

ユーチューブなどのネット動画では「テレビ化」も進む。不祥事などでテレビに出演できなくなった芸能人が参入し、撮影・編集などのスタッフもテレビから移ってきたことで番組の質が上がっているのだ。「素人の自作動画」の全盛期は遠からず終わるだろう。つまり、テレビの衰退とネットの隆盛が鮮明になる一方で、両者は互いに近づいているのだ。

調査報道にシフトする新聞

新聞業界の変化はさらに大きい。部数が毎年、百万単位で減っていることに加え、コロナ禍による広告収入の落ち込みが致命的な打撃を与えるからだ。主要紙でも人員削減が進んでおり、全国に取材網を張り巡らせ、きめ細かくニュースを発掘する体制は維持できなくなりつつある。今後は...

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