記者と広報は、なぜすれ違う?第一線で活躍するメディアの記者に本音で語ってもらいました。
大手メディア 報道記者 Nさん(女性)某大手メディアに所属する生活部の記者。現在は本社で何でも屋の「遊軍」として働く。取材対象は市井の人から政治家、官僚、企業まで。ちなみに今回のコラム執筆は、前々号(10月号)の本コーナーの記事「美人広報として取材してください!?」の内容が面白く、思わず広報会議編集部に問い合わせを入れたのがきっかけである。 |
全国の官公庁や業界団体内に置かれ、新聞社、テレビ、通信社の記者が常駐する「記者クラブ」。『伏魔殿』のように言われ賛否があるが、実際のところ、毎日膨大な数の記者会見や投げ込みがあるため、それをさばくための共助の仕組みという側面もある。
筆者はこの春まである中央官庁の記者クラブに3年在籍していた。そこで出会った広報担当者の中には「社会人として大丈夫?」と心配するほど非常識な人がいた。反面教師としてもらうため、その経験談をお伝えしたい。
幹事社のシステム、知っていますか?
最近の中央官公庁はセキュリティチェックが厳しく、アポなしでプレスリリースを持っていくことができない記者クラブが多い。記者会見も当日に急遽入れるのは、原則不祥事や大きな発表などの緊急的な案件のみ。そこで窓口になるのが「幹事社」だ。クラブに加盟するメディアが持ち回りで担当し、情報提供を受けた内容を全社に連絡する。広報が一斉にPRしたい場合は幹事社のシステムを知っていると、調整がスムーズになる。とはいえ幹事社はあくまで仲介役。しかも通常業務にプラスして受け持っているため期間中はかなり忙しく、予期せぬ出来事に振り回されることもある。
幹事社をやっていたとき、とあるPR会社の広報担当者から「クラブに出向いて記者と挨拶したい」という電話をたまたま取った。普通は挨拶とはいっても、誰かの紹介かメールや電話で事前にやりとりしているケースがほとんどなので「こちらは幹事社ですが……」と説明したが、とにかく「誰でもいい」の一点張り。挨拶をするだけなら、と日時を決めて会うことになった。
その後、担当者はこちらの都合もお構いなしで、業務中に「記者クラブは何階ですか?」「そちらは何人来られますか?」などと何度も電話かけてきて、嫌な予感のまま当日を迎えた。現れたのは20代と見られる男性担当者……と男女。なんと、断りもなく関西からクライアントの食品会社の幹部2人を引き連れてやってきたのだ。男女は「伊丹空港から今日着いたんですよ」と言いながら、キャリーバッグを引いていた。仕方がないので ...