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長寿企業の極意・周年イヤーの迎え方

設立から10年の節目で策定 ユーグレナ社員の行動指針「ユーグリズム」とは?

ユーグレナ

社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学ぶ連載です。

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10周年記念の特注名刺入れ 
同じくバングラデシュにルーツを持つマザーハウス特注の名刺入れは全社員に配られた。オフィスも2015年3月に移転したばかり。

2015年8月、ユーグレナは設立10周年を迎えました。この節目を活用し、記念イベントの企画や記念品制作などに取り組みました。その狙いについて、本社経営戦略部 広報IR課課長の安間美央さんにお話しをうかがいました。

今後も継承する「軸」を再確認

企業の創業メンバーは最初の5~10年、「草創期」として事業の基盤づくりに奔走します。そして10年が経過したタイミングで規模の拡大に向けて、新たな仲間を増やしていきます。一方、同時に起こってくるのが創業期をともにしてきたメンバーと、新メンバーの持つ「経験」の格差です。社員がそれぞれで「自社らしさ」を目指そうとしても、バックグラウンドなどから差が出てしまいます。

ユーグレナも1年に約15人のペースで人員が増えており、例外ではありません。そこで今回の10周年は「拡大期」へと移行するために、改めて自社が継承していきたい「軸」を言語化し、再確認する機会としています。まず周年イヤーに入る前の2015年1月、社員全員で行動指針を考えるワークショップを実施。4月には行動指針「ユーグリズム」を策定し、「多様性を楽しむ」「地球を健康に」「オーナーシップ」「常に最新、常に一番」「自己責任」などユーグレナの社員として欠かせない軸を10項目にまとめています。

周年の本質は「設立から現在までの過去に焦点を当てる(時間の観点)」「“会社ごと”に社内外を巻き込む(空間の観点)」ことですが、10周年はまさに後者を中心とした施策を行っています。社員全員が全社視点を持って会社のことを考える─すなわち「“会社ごと”を扱った」という点がポイントです。安間さんは「定めた行動指針を体現し、未来を創っていくのは全員の役割。策定後、自分たちで決めたこととして自己認識を培うことが大切」と言います。

2015年8月に開かれた10周年グループ全体会議でもその姿勢は貫かれています。海外が拠点のグループ会社などを含め全社員が集まり、複数ある事業の歩みを共有し、グループの未来について考えるワークショップを実施しました。

社員が自社の未来を協力しながら考え、アイデアを出すワークショップは事業への直結が難しいことから、実施をためらう企業も多く見られます。その点、ユーグレナでは、事業が拡大していくにあたり「グループの未来を自分たちも考え続ける」という思いが起点となっています。これまでも、そしてこれからも当事者として“会社ごと”に向き合う─全員が集まる場において考えたいことを、この一点に絞り込みました。目的の明確化が、10周年を節目とするインナーブランディングを前進させた要因のひとつといえるでしょう。

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海外から社員も参集した全体会議とワークショップ 
会場では、事業ごとに就職説明会風のブースを出展。社員が自由に各社ブースを回り、相互理解を深めた。さらにグループワークでは、ユーグレナの将来についてテーマに沿って意見を出し合った。中には上海やバングラデシュの子会社から参加したメンバーも。

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10周年記念冊子に全グループ社員登場 
全体会議で社員に配布された「ミライBOOK」。10周年の時点で在籍している全社員のプロフィールなどを収録しており、社員同士の交流のきっかけとした。

社外向けブランディングにも活用

このほか、記念品として創業の思いを込めた名刺入れを作成した点も突出したアイデアでした。同じくバングラデシュにルーツを持つ、マザーハウス社とのコラボレーションから生まれたものです。2015年12月には会社案内も刷新し、社長や役員が事業への想いをストーリー調でまとめた内容に生まれ変わりました。いずれも、社員が顧客に対して自社を語ることができるツールとして工夫されています。対外的な打ち合わせの場で自社にしかない名刺入れを持ち、自社の思いやユーグリズムについて顧客に語る。新人も、先輩が語る姿を見るうちに、自らも自然と語れるようになる─こんな活用イメージを描いているそうです。

周年事業における記念品や会社に関する各種メディアは、ともすると一過性のものに留まってしまいますが、周年事業のコンセプトとの一貫性をもたせること、そして、「社外」向けの施策も「社内」を、そして「社内」向けの施策も「社外」を強く意識することで、形骸化することなく活用されていくのです。

「社内のあちこちから『ユーグリズム』というワードが自然と聞こえるようになったことが嬉しい」と話す安間さん。次なる課題をうかがうと、「社外から求められるものは自分たちの思っている以上に大きい。だからこそ、社会的責任をまっとうする“守り”とユーグリズムなどを軸に価値を付加していく“攻め”を全社で体現していくこと」と明かしてくれました。バイオテクノロジーの会社として、「拡大」というステージへと進み続ける今後に注目していきたいと思います。

ユーグレナ 10周年プロジェクト
広報IR課を中心に進め、全社グループワークを経て行動指針を策定
ステークホルダーごとの施策 顧客・社会:会社案内刷新、オフィス移転、名刺入れの活用
従業員:行動指針の策定、社内イベント、名刺入れ作成
2015年 1月 ・行動指針刷新のための全社グループワーク
4月 ・行動指針「ユーグリズム」を制定
・朝礼の場で各役員から「今週のユーグリズム」を発表
8月 ・全社員参加の10周年全体会議、祝賀会
10月 ・マザーハウスとのコラボレーションで社員用の名刺入れを作成
・「ユーグリズム」にちなんだ表彰の実施
12月 ・会社案内を刷新
2016年 1月 ・ブランド、コンプライアンスをテーマに社内研修

ユーグレナ
2005年設立

創業者・出雲充氏が大学在学中にバングラデシュで貧困を目の当たりにし、栄養失調状態を改善できるユーグレナ(和名:ミドリムシ)の可能性に注目。2005年に設立された。世界で初めてミドリムシの屋外培養に成功したのち、食品・化粧品・バイオ燃料など幅広い事業展開に取り組み、2012年に東証マザーズ、2014年に東証一部上場。

総括

市場環境は日々刻々と変化しています。それに応じて企業も「草創期」から「拡大期」「多角期」「成熟期」へとステージを変えることで存続します。このような企業のステージ変化は特定の人だけでは起こすことはできません。自社が置かれている状況を正確に捉え、“周年”という節目を、社員の、社員による、社員のための転機として活用してほしいと思います。

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取材風景 
広報IR課の安間さん(左)と筆者。オフィスもコーポレートカラーのグリーンで彩られていました。

リンクイベントプロデュース エンジニアリングユニット マネジャー
根本絢帆(ねもと・あやほ)

2005年リンクアンドモチベーション入社。リンクイベントプロデュース創業時より参画、数多くの周年事業、理念浸透プロジェクトに従事。イベントを通じた企業のインナー・アウターブランディング、人の心を動かす「場創り」を支援する。

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