キヤノンマーケティングジャパングループでは、紙、ウェブ、SNSの3メディアで社内広報を展開している。特にウェブは“ポータルサイト”と位置づけ、自社や業界の動きをリアルタイムで把握できるよう構成。社員の積極的な情報活用を広報部で支援している。
即時性の高い情報はポータルサイトやSNSで共有
月間30万PVを誇るポータルサイト。中でも、日経新聞、日経産業、日経MJの三紙から同社やグループ企業のニュースが自動的に表示されるコーナーは人気が高い。
紙、ウェブ、SNSの3つを連携
キヤノンマーケティングジャパン(以下キヤノンMJ)に独自の社内報が誕生したのは、前身のキヤノン販売が本社を品川に移した2003年のことだった。それまで、生産や開発を担うキヤノンの社内報を共有していたが、マーケティング情報に軸足を置くこと、同時期からグループ企業が増え始めていたことから、キヤノンMJグループとしての一体感を醸成することを目的に、独自の社内報冊子である「Canon Frontline」を立ち上げた。夏場は合併号となるため年11回発行。2005年には、速報性がメリットの社内ポータルサイト「Canon Frontline Web」を開設し、さらに現在では双方向のコミュニケーションが可能な社内SNS「Canon Frontline Community」も活用。クロスメディアでの社内広報に取り組んでいる。「紙、ウェブ、SNSのそれぞれの特徴を活かした連動に力を入れています」と、同社コミュニケーション本部 広報部 広報第二グループ課長の若杉卓矢氏は話す。
キヤノンMJでは、社外広報を広報第一グループが、社内広報を第二グループが担当。第二グループでは前述の3つのメディアのほか、パートナー企業や法人ユーザーへの年4回発行のコミュニケーション誌「Cmagazine」、毎年更新の会社案内「CANON MJ TODAY」を含め8人で推進している。各グループ企業の情報は、各社に置かれている編集委員と連携して集めている。
具体的に、紙とウェブの社内報をどのように使い分けているのだろうか。若杉氏は、それぞれの役割を次のように語る。「紙の社内報は、じっくり読み込める記事を通して、グループの活動をより深く理解してもらうことを目的としています。一方、ウェブの利点はやはり速報性。当社はもちろん、グループ各社の情報も原則1週間以内に公開するようにしています。紙だとスペースに限りがあるので、それを補う意図もあります」。
特徴の異なるメディアを使いこなすことで、充実したコンテンツづくりが可能になる。例えば、紙の「Canon Frontline」で特集を組むにあたり、事前に「Canon Frontline Web」で社員に向けてアンケートを実施。それを素材に誌面を制作し、載せきれない内容はポータルサイトで紹介。さらに、それぞれで紹介した情報について編集部と社員、あるいは社員同士で話題にする場として、SNSを活用することで特集の内容を浸透させている。
ポータルサイトはニュースが要
社内報でイントラの活用法について取り上げることも。
目的やターゲットにあわせクロスメディアで展開
ポータルサイトでは誌面で展開する社内報の特集に関するアンケートを実施し、一方、社内報では効果的なポータルサイトの使い方を掲載したりと、各メディアの特性を使い分けて活用している。
個別メディアの最適化という点でも学ぶところが多い。ウェブの「Canon Frontline Web」はポータルサイトと位置づけているだけあり、このサイトを訪れればグループ内の動きを中心に業界の動き、それと連動する社会の動きを毎日リアルタイムでキャッチアップできる構成になっている。
自社、業界、そして社会の毎日の動きを知るのに、要となるのはやはり「ニュース」だ。同社では「日経テレコンKnowledge Passport」を導入し、トップページ右上のボックス「日経三紙キヤノン記事」に日経新聞、日経産業、日経MJの三紙から同社やグループ企業のニュースが自動的に表示されるように構築。ここからは「日経ニュース&サーチ」というページにリンクしており、「キヤノン関連記事」「マーケティング関連記事」のほかに、各紙の一面コーナーが設けられ、それぞれニュースの詳細を閲覧できる。また、同コーナーには「過去の関連記事」「今日のプレスリリース」へのリンクを貼り、自社の動きをより深く知ることができるほか、広報活動に関する社内の理解を高めることにもつながっている。このニュースページは、全体の月間30万PVのうち4万PVを占める、閲覧性の高いコンテンツとなっている。
広報第二グループの栗原昭宏氏は、「グループ内のニュースは広報部主導で発信していますが、競合の情報などは拾いきれないところもあります。特に営業担当者は、出先などですぐにスマートフォンからマーケティング情報を得たいので“日経ニュース&サーチ”が役立っています」と話す。キーワードを登録し、関連ニュースを毎朝メールで受け取ることもできるので、この機能を使ってクリッピングし業務に活用している社員も多いという。また、希望者には、「エキスパートサーチ」ページを用意し、企業情報や人事情報など、日経の各コンテンツが閲覧できる仕様とし、営業支援にも役立っている。
キヤノンMJではこの3月末に社長が交代し、ITソリューションなど独自事業に一層注力すると打ち出している。栗原氏は「ITに関する情報は世の中のウェブサイトでも豊富に得られます。社員がそこに自ら情報を取りに行くだけでなく、ポータルサイトからも積極的にタイムリーな情報を発信する必要があると考えています」と語る。2016年から新たな5カ年計画が実施されるのに合わせ、社内広報でも社員が顧客の課題解決に役立つ、本当に社員に必要な情報は何かを改めて考えていく。
「一方通行ではなく、我々のメディアがハブとなって、社員同士および部門同士の距離を近づけ、新たな価値を生み出すことが理想です」と若杉氏。クロスメディアの連携を基盤に、さらなる力強い展開が期待される。
日経メディアマーケティング主催のセミナーが9月9日(水)、宣伝会議東京本社セミナールームで開催されます。宣伝会議ウェブサイトのイベント情報をご確認ください。
キヤノンマーケティングジャパン コミュニケーション本部 広報部の若杉卓矢課長(左)と栗原昭宏氏。
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