政府の要請により、経団連では2016年卒から採用活動の期間を後ろ倒す方針を決定した。学生との接触機会を少しでも増やそうと、今夏の企業のインターンシップは例年の1.5倍から2倍に増加した。果たして採用戦線の激化は、採用広報にどんな影響を及ぼすのだろうか。
選考期間が超短期化、未内定者も増加?
経団連は2016年卒の採用活動から、採用広報の解禁を大学3年生の12月から3月に、選考開始を大学4年生の4月から8月に後ろ倒すという指針をまとめた。どの程度の数の企業がこの方針に従うのかは不透明で、各社慎重に周囲の出方をうかがっている。多くの企業が内定式を開催する10月までに採用予定数が確保できるのか、大手の内定が固まった後に採用をすることの多い中小企業はどうすればよいのか――。恐々とする採用担当者も少なくない。
混戦必至の2016年卒採用に、企業はどう対応すればいいのか――?専門家に予想してもらった。
学生の大手志向が顕著に
採用期間の後ろ倒しは、3年前にも一度実施されている。当時は採用広報の解禁を大学3年生の10月から12月に変更したが、企業や学生にどのような影響があったのだろうか。
就職情報サイト「マイナビ」の三上隆次編集長は、当時をこう振り返る。「就活の準備を遅らせてもいいと考えて、自己分析や企業研究など準備不足のまま選考に臨む学生が続出しました。その結果、知名度のある大手に人気が集中。今年は好景気で大手が採用予定数を増やしており、学生の大手志向もさらに強まっていますから、こうした傾向が一層顕著になると予想されます。特に2016年卒は、採用広報のスタートは3月の春休み期間中。授業期間中なら周囲の友達につられて活動を始める人もいますが、就職活動が始まったことに気付かずに出遅れる学生も少なくないでしょうね」。
一橋大学キャリア支援室の西山昭彦教授も学生の準備不足を懸念する。「今でも業界の全体像を知らないまま、就活に突入して、知名度の高い企業や先輩の就職先を志望する学生は多いです。以前に比べて学生は就職情報サイトを通じて大学名にかかわらず自由に応募できるようになったので、求められる基準を知らない学生がやみくもに大手にエントリーして次々に落ち、就職活動そのものに疲弊してしまうという事態も出てきています」。
10月1日には大手企業の入社式がニュースで一斉に報道される。就活スタートが遅れ、内定を手にできないまま焦る学生の姿も想像に難くない。西山教授によると、学生の間では志望の企業に内定しないと就職留年を早々に決めてしまう学生も多いといい、そうなると企業にとっては必要な採用数を確保するのが一層難しくなる。
採用本格化の時期は混沌
8月選考順守は全体のわずか3分の1。
一方、採用スケジュールの後ろ倒しで、かえって企業が採用にかかる期間が長期化すると予想するのは ...