ネットが発展し、インフルエンサーとのコミュニケーションが重要になっている。長らく企業広報に携わる玉川岳郎氏は、デジタルならではの戦術を身につけながら伝統的な広報も担う「ハイブリッド広報」が必要であると提言する。
デジタルを介して情報を届ける際のポイント
1. デジタル広報はあくまで「ビークル」本来の広報の目的を忘れずに
2. ソーシャルメディアは有効だが高潔な広報の姿勢が不可欠
3. インフルエンサーに影響するには自らがインフルエンサーになろう
4. 目指すは「ハイブリッド広報」
デジタル活用=軽い広報?
新時代の広報とは何かを考え始めた2007年ごろ、試験的にブログや当時立ち上がって間もなかった各種ソーシャルメディアを広報活動に活用し始めました。そのころはソーシャルメディアの利用者が限定的だったこともあり、周囲のほとんどの人の理解を得ることが難しく、なかにはこうした取り組みを「軽い」などとご批判を頂戴したことがあります。時代は変化していますが、今でもデジタル主体の広報に対してそのように思われる方々がいます。同時に、デジタルを活用しない広報は前時代的で「古い」と評されることがしばしば。
さて、はたして古い広報と、軽い広報。この両者をつなぎとめるために、私たちはどのような未来像を描けばいいのでしょうか?今回、新時代の情報の届け方を企業の立場から解説するにあたり、「広報の仕事とは何なのか」を今一度考えてみたいと思います。
広報の目的を見据える
「ネットPR」や「デジタル広報」という言葉を、多くの広報担当者が口にするようになりました。しかし、広報の目的について議論されることは極まれです。新時代の広報に向けた議論とは、新しい手法のみにとらわれることなく、広報のディシプリン(規律)をしっかり見据えた上で行うべきだと考えています。
私自身、「ソーシャルメディアの利活用」「ニュースリリースの効果的な展開」「取材の効率と効果」「効果測定」など多くの方と広報の実務について情報交換をする機会に恵まれています。そのなかで、各々の広報の目的について話題にすると「ウーン」と考え込んでしまう担当者に幾度となく出会いました。
そもそも広報は何を目指し、どうあるべきなのか。そのあるべき姿を意識しながら、変化する時代にどのように対応すべきなのか。広報の過去や現状、そして未来の姿について議論をするときには、自身の携わる広報の目的と向き合いながら、様々な改革に取り組む必要があります。
「大聖堂を建てる」使命感
仕事の本質はどっち?
どちらの職人が、より日々の仕事の質を向上させられるだろうか?一つひとつは細かな広報の業務も、企業のビジョンや事業戦略に紐づいている。自分が何に従事しているのかを認識し、使命感を持って取り組もう。
また、広報に携わる以上、「私の仕事は何か」について深く考えることが ...