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小さなお店を流行らせる広報術

肉ブームでステーキハウスが開店ラッシュ、このブームをどう読む?

吉野信吾(プロデューサー)

ちょっと前まで、「黒毛和牛A5ですから」というフレーズが高級牛肉の代名詞のようにあちこちで語られ、「A5」という記号=超高級牛肉という認識が消費者にも刷り込まれました。「A5」「Y6」などという記号は、デパートの紳士服売り場のスーツのサイズ表記であることを知る若者も少ないこのご時世。ちなみにオッサンは腹が出た体型ですから下に広がった「A」や「BB」。若者は上部が広く腹が出ていないから「Y」。まさに見たまんまですけれど。

話を戻しますが、その黒毛和牛ブームから、こんどはアンガス牛(イギリス原産の食肉牛)のブームです。サシという霜降りの脂身が入った黒毛和牛に比べ、赤身のアンガス牛は脂肪分が少ないゆえにヘルシーです。とくに年配者には「高タンパクである肉を食べなさい」と推奨されていますし、ダイエットにも適した食材ですから、和牛に比べて脂肪分が少ない赤身の牛肉はもってこいの食材です。

ステーキハウスの開店ラッシュ

6年前にオープンした「ルース・クリス・ステーキハウス」に続き「ウルフギャング・ステーキハウス」「ルビージャックス・ステーキハウス」など、東京のほぼ中心、ど真ん中(虎ノ門、六本木周辺)に続々と開店するこうしたステーキハウスは、けっして値段も安くはありません。いくらブラックアンガスのプライム肉(米国産、オーストラリア産、ニュージーランド産)だといっても、原価は和牛の価格の足元にも及ばないはずなのですが、メニューを見るとなかなかの値付けです。場所代とはいえ高いと感じます。

その証拠にワインリストをチェックすると、バブル以降、ワインの値付けは値段の2~2.3倍程度が当たり前で、それ以上安い値付けの店もあったぐらいですから。ところが4倍、いや卸値を考えると5倍の値付けをしている店もありますから、当然肉の値段もボッタクリに近いわけです。熟成肉という言葉にだまされてはいけませんが。

小さな店を営む方々は、こうした傾向を単に「ステーキハウスの流行」「直火焼きの肉ブーム」などといった見方をするかもしれませんが、ちょっと引いて見てみましょう。店は小さくとも、経営者には多角的な視点から考察する洞察力が求められます。単に飲食店が黒毛和牛から赤身のアンガス牛にトレンドをシフトしている結果が、こうしたステーキハウスや直火焼きの店の開店ラッシュにつながっているのでしょうか。実は、それだけではない事実がころがっています。

開店ラッシュの背景とは

例えば、上記の店々が位置するロケーションは ...

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