EC化率が高まってきているとはいえ、食品や飲料、日用品は今もなお流通で購入されていることがほとんど。今後も自社製品の売上を伸ばしながら、小売の利益になるような売り場提案は不可欠になる。ヨーグルトを主に展開するダノンジャパンでは、2020年からカテゴリーのショッパー理解を基にした成長戦略を強化した。これにより自社製品だけでなくカテゴリー全体の成長に貢献することで、小売とのWin-Winな関係構築を実現している。ここでは、同社 営業戦略部 営業戦略部長の川戸裕之氏が、メーカーがショッパーインサイトを把握するメリットを解説する。
ヨーグルトブランドの「ダノンビオ」や「ダノンオイコス」、植物性ミルクの「アルプロ」などを展開するダノンジャパンでは、ショッパーインサイトを起点にした売り場づくりや販促企画に力を入れている。
その根幹を担っているのが、同社の営業戦略部。3つのチームから構成されており、ブランドカテゴリー全体の棚割り戦略立案を担う「カテゴリーマネジメントチーム」、店頭や来店前におけるさまざまな施策によってショッパーの購入率の最大化を目指す「ショッパーアクティベーションチーム」、そして価格やプロモーションといったGTMをブランドごとに担当をつけて戦略を立案する「チャネル戦略チーム」によって成り立っている。
なかでもショッパーアクティベーションチームは、店頭でいかに消費者の目に留まらせて、手に取ってもらうかを追求。ブランドを横断して、POPや販促物を制作したり、小売業と連動して行う店頭キャンペーンを企画している。
買い物客の解像度を高めるとメーカーには何がメリットなのか
メーカー企業の営業にとって、売り場にいる買い物客の行動を理解することは、効果的な販促企画や小売業への商談にも欠かせない一要素だ。
とはいえ、データを用いてショッパーを分析し、その仮説を営業活動に活かすことができているメーカーは少ないと聞く。ショッパーの理解が自身の営業や担当ブランドの販促に有効だとわかってはいるものの、手が回らず、十分に実施できていない企業も多いのではないだろうか。
しかしダノンジャパンでは、ショッパー分析をダノンの文化として根付かせることができている。なぜ、同社ではショッパーの理解を重視するようになったのか。
営業戦略部 シニアマネージャー 川戸裕之氏によると、ダノンジャパンとして課題だったのは「買われた/買われなかった」という結果に至るまでのプロセスを把握できていないことだったと話す。購買されたかどうかの二元論で成果を見ていたため、より効果的な売り場をつくることが不十分だったのだ。
「購買に至るプロセスとしては、まず売り場に来て、目に入って、興味を持ち、手に取って...