光文社が発行する雑誌『Mart』は、時代によって変化するファミリー層や母親のインサイトを捉え、読者のニーズを先回りしたような情報を発信してきた生活情報誌だ。まさに“今”を生きるファミリーの価値観を捉えるプロである『Mart』から、編集長の小松伸司氏が登場。今どきの家族が重視する消費への意識をもとに、2024年の流行を予測する。
光文社発行の『Mart』の創刊は2004年。ファミリーや母親向けの生活情報誌として、日々の暮らしがより豊かになるような情報を発信してきた。しかし、コロナ禍を経て読者を取り巻く環境や価値観が変化していることをきっかけに、扱う情報も少しずつ変わっている。編集長の小松伸司氏によると、それまでの『Mart』は「母親自身の生活」に焦点を当ててきたが、コロナの影響で「家族とともに過ごす生活」で使える情報も発信するようになったという。
「コロナ禍は学校が閉鎖されたり、外出が難しい期間だったこともあり、常に子どもが家にいる状況で、家族とともに過ごす時間が増えた家庭も多かったはずです。『Mart』の読者調査でも、その傾向は見られました。それに伴って印象的だったのは、“家族との時間を大切にしようと思うようになった”という回答が増えたこと。読者の価値観が変わりつつあることに気づき、家族で過ごす週末を『ときめく週末』に変える情報を発信する雑誌としてリブランディングしました。アフターコロナの今、この価値観が『Mart』のターゲット層である母親やファミリー層に根付いたと考えると、消費を考えるときも、その価値観に注目する必要があるのではないでしょうか」(小松氏)。
次にヒットするのは「日常の特別化」を叶えるもの?
時代とともに変わるインサイトを捉え、“今を生きるファミリー、母親”が欲しいと思う商品やサービスを熟知している『Mart』では、2024年の流行をどのように捉えているのか。小松氏が挙げたのは、「日常の特別化」を実現する商品だ。
「“ファミリーの週末”と聞くと、アクティブなことをしたり、遠出したりするというイメージもあるのではないでしょうか。しかし、今どきのファミリーは、育児に家事に仕事に、忙しい毎日を送っています。中には、“週末は家事を終わらせる日”などと捉えている人もいるかもしれません。“週末”への意識変化が生まれている今、注目するのは『日常の特別化』です。週末を、非日常を味わう時間ではなく、“日常の延長”として捉えざるを得ない人が増えていると考えると、その日常に少しの特別感をプラスするための消費が増えるのではないかと考えます。
例えば調理家電。いつもの料理をちょっと良いものにしてくれる商品が注目を集めるのではないでしょうか。少し前にバルミューダの家電が流行ったのも、その風潮の一環だと思います。普段、日常的にする料理という行動ですが、そんな中でも、使っていて気分を上げられるような、そんなイメージです」(小松氏)。
その他、小松氏は『日常の特別化』という文脈でピクニックも流行するのではないか...