「店舗(リテール)」と「エンターテインメント」を組み合わせた造語である「リテールテインメント」という言葉を初めて聞いたのは、10年ほど前だろうか。「運営効率だけを求めるのではなく、買い物の楽しさを見出そう」という動きの中から現れた概念だと記憶している。
その、古典的な手本のひとつとされるのが、米小売りチェーンのスチュー・レオナルズだ。約36年前、ニューヨーク・タイムズ紙は、「食料品店のディズニーランドだ」と評した。
大きな倉庫内に、生鮮や精肉など各部門がブースを出しているようなストアデザインが特徴。かつては不正もとりざたされたが、ファンの多い店舗だ。同社のInstagramからは楽しげな雰囲気の一端が伝わってくる。
「リテールテインメント」は、決して新しくはない概念だが、近年、再び光が当たりはじめている。ネット通販との差別化を図る文脈だ。かつてのように、ただ買い物体験をエンタメ化し、店頭をにぎやかにしようというのではない。新たな顧客の獲得や、既存顧客の満足度向上、商品理解の深化など、目的意識がはっきりしてきたようにも思える …
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