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「くまモン」起用プロモーションの効果

「キティ」「ミッキー」「くまモン」のキャラクターパワーをデータから比較する

キャラクター・データバンク 陸川和男

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「くまモン」や各地のご当地キャラクターの販促への起用は、ここ最近のトレンドともいえる。では、そのプロモーション効果を支えているのは何なのか。また、どのように活用すれば、その力を有効に活用できるのか。キャラクターパワーに関するデータを保有する専門家に聞いた。

企業タイアップ「第3の選択肢」がご当地キャラ

ここ2、3年、広告販促分野におけるキャラクターの起用が増えている。現在のように、テレビ、パソコン、モバイル端末など、消費者の情報接触経路および情報量が格段に増加する中で、大衆性のあるキャラクターは、分かりやすくメッセージを伝えることができる媒介として有効だからだろう。

しかし、著名な既存キャラクターを使う場合はそれなりのロイヤリティがかかり、さらに表現面での規制も多い。一方で、起用企業が自ら開発したオリジナルキャラクターの場合は、使用料を支払う必要もなく自由に活用できるが、数多あるキャラクターの中で認知、さらには商品の購買への影響力を獲得していくことは容易ではない。

そんな中で、第3の選択肢として登場したのが「ご当地キャラクター」だ。これは、地方自治体などが地域振興を目的に開発したキャラクターの総称で、「ひこにゃん」が登場した2007年頃からの"ゆるキャラブーム"に乗って多くの企業がタイアップを実施している。

このブームによってご当地キャラクターの数は爆発的に増えたが、くまモンをはじめとするごく一部を除けば、認知の低いキャラクターがほとんどだ。それでも、造形的に特徴のある、いわゆる"ゆるい"キャラクターが多く、また「ゆるキャラ」として市民権を獲得した今、集合体で見せることによって存在感が増している。アサヒ飲料「アサヒ 十六茶」の広告展開はまさにこうした活用方法の典型で、さらにこの起用をきっかけにスターになったキャラクター(ふなっしー)もいる。まるで、未完成な存在を応援したがる、近年の日本のアイドル文化のようだ。

ご当地キャラクターを起用する最大のメリットは、商業キャラクターや企業のオリジナルキャラクターと違い、存在自体が社会性を包括しているという点だ。つまり、企業がご当地キャラクターを起用すると、暗に「疲弊した地域経済を応援している」というメッセージを発信することができるのだ。この点は、他者との"共感"や"共有"を求める現在の生活者とコミュニケーションする上で重要な要素であり、またソーシャルメディアがそれを後押ししていることは言うまでもない。

さらに、ご当地キャラクターには使用料がかからないものが多い。広告・販促予算が削減される中、このことも起用を加速させる要因の一つとなっているだろう。

「キティ」「ミッキー」を上回る項目も

こうした「ご当地キャラクター」の中で、すでにその域を越えているのがくまモンだ。12年の関連商品市場が293億円に達した理由はいくつかある。まず、国内企業であれば、周知の通り商標使用料は無料。この戦略は一見、くまモンの資産価値を下げるように思われるが、結果として県のPRに多大な効果をもたらした。商品化するメーカーにとっては、通常のキャラクターなら小売上代の3~5%課される使用料が無料であることは大変ありがたいことだろう。国内のキャラクター商品市場が縮小傾向にある近年ではなおさらだ。その上で、前述した通り「熊本県を応援する」という社会的なメッセージを伴って販促活動を行えることを考えると、起用企業が多いことも納得だ。ただ、現在では、仮に商標使用料が有料でも起用したい企業は多いだろう。そう思わせるほどのキャラクターパワーを、くまモンは有しているからだ。

当社が13年6月に実施した「キャラクターイメージ調査」の結果(図1~3)を見ると、くまモンの認知度は全体ではほぼ9割に達しており、好感度も6割に近い。「ハローキティ」「ミッキーマウス」という、国内外を代表するキャラクターと好感度を比較しても、男性では40~50代を除いてハローキティを上回り、さらに中・高校生ではミッキーマウスをも超えている。女性についても、未就学を除けば両キャラクターと均衡している。さらに商品欲求度を見ると、男性ではすべての年代でハローキティを上回り、女性も未就学を除けばほとんど変わらない、あるいはハローキティ、ミッキーマウスともに上回る年代も存在する。

以上のデータでも分かるように、すでにくまモンは著名な商業キャラクターと比較しても見劣りしないくらいのポテンシャルを獲得しており、ご当地キャラクターの域を優に越えている。さらに言えば、通常、性差や年代によってキャラクターの支持層は限定されるが、くまモンは老若男女から偏りなく支持されるという、稀有(けう)な存在である点が特徴的だ。

社会性をいかに取り入れていくかがポイント

認知度・好感度・商品欲求度とともに、くまモンの存在感を表しているのがイメージ評価だ。それぞれのキャラクターは固有の世界観を持っているが、イメージ評価は、それが生活者にどの程度理解されているかを測る指標として重要だ。言い換えれば、イメージ評価の総量は、そのキャラクターの存在感を示している。図4からも明らかなように、「かわいい」は圧倒的にハローキティが高いものの、「おもしろい」「ユーモアのある」「旬である」という各項目ではくまモンがトップとなっている。また、「かわいい」「やすらぐ」ではミッキーマウスを、「親しみのわく」ではハローキティを上回る。これらのイメージ評価から、くまモンは"ゆるキャラブーム"に乗った「おもしろい」「旬な」キャラクターとしてだけでなく、「やすらぐ」「親しみのわく」存在として認識されていることが分かる。この結果は、キャラクター性がきちんと生活者に理解されており、独自の存在感を示していることを表している。

このようにくまモンは、著名なキャラクターと同様、汎用性が高く、キャラクター性だけで見れば、どのような企業、商材とも相性が良く、性別・年代関係なくほぼオールターゲットのキャラクターと言えるだろう。ただしそれを可能にしているのは、くまモンが、あくまでも熊本県のPRキャラクターであるという点─つまり"社会性を伴ったキャラクターである"という点が大きい。著名な商業キャラクターと同等のポテンシャルを有しているからといって、商業主義的に商品化を進めていけば、これだけのキャラクターパワーは獲得できていなかっただろう。

企業がくまモンを起用する際は、この点を理解することが重要だ。キャラクター使用で最も重要なポイントは「使用目的の明確化」だが、くまモンの人気にあやかろうというだけの目的では、期待通りの効果が得られるとは限らない。くまモンは、熊本県のPRキャラクターという位置にいるからこそ支持を得ていられる。そこが、さまざまなマーケティング課題を解決する「ミッキーマウス」や「ハローキティ」とは、大きく異なる点であるだろう。

言い換えれば、自社のマーケティング課題に対して効果的にくまモンを活用するには、社会性をいかに取り入れるかがポイントである。例えば、全国展開の商品でくまモンを起用したエースコック「くまモンの太平燕だモン!」や、カゴメ「野菜生活100 デコポンミックス」のように、原料や商品自体が熊本県と密接にかかわる商品の開発は、分かりやすい取り組み方だ。現時点ではこうした発想から離れた瞬間に、恐らくキャラクターのブランド価値も低下するだろうし、起用企業の販促効果も減退するだろう。

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陸川和男(りくかわ・かずお)

キャラクター・データバンク 代表取締役社長。広告・マーケティング専門誌の編集、マーケティング会社の研究員などを経て同社設立。共著に『図解でわかるキャラクターマーケティング』(日本能率協会マネジメントセンター)など。産業能率大学 デジタルコンテンツラボ 客員研究員。

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