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脱炭素社会へ 企業価値を提示するクリエイターの役割

「森と人の間」カーボンネガティブな企業の広告表現

住友林業「森が動くと、経済が動く。」

住友林業は2021年10月から12月にかけて、脱炭素をテーマにした5種の広告を新聞や雑誌などに順次出稿した。事業自体が脱炭素を促進する、同社ならではの広告表現とは。

「森が動くと、経済が動く。」。2021年10月末から12月末にかけ、新聞広告第1弾~5弾を出稿。その他、雑誌広告や大手町駅周辺でのOOHとして展開。これを元に制作した動画はタクシー広告やネット広告としても展開した。

企業から社会へ目線を変えた

住友林業は2022年2月に長期ビジョンを発表した。その中では、今後の事業の柱のひとつとして脱炭素へのより一層の取り組みが挙げられている。今回の広告シリーズはその発表に先立ち、ティザーのような立ち位置で制作されたものだ。新聞広告は全5種類あり、それぞれカーボンニュートラルの達成に向けた「森」「木造ビル」「建築材」「林業」の価値や、「地下水位の予測システムを元にした森林経営のコンサルティング事業」を訴求する内容となっている。

企画制作を担ったのは、電通のクリエイティブディレクター 小野総一さんらのチーム。企画に際してリサーチや社員へのヒアリングを進める中で気付いたのは、脱炭素に対する他社と住友林業のスタンスの明確な違いだった。現状、多くの企業では“CO₂の排出量をいかに削減していくか”に主眼が置かれている一方で、住友林業は森林を多数所有しているため、既にCO₂の排出量よりも吸収率のほうが上回る「カーボンネガティブ」の状態にある。

さらに木材は炭素を内部にためて、固定させる性質があるため、建築に利用することで脱炭素に直結するほか、鉄筋コンクリート造よりも建てるときのCO₂排出量が少ない傾向にある──つまり、自社での脱炭素化を越え、事業そのもので日本社会でのカーボンニュートラルの達成に貢献できる強みがある。

「すでに他社と異なる文脈でのコミュニケーションができる状態なのだと感じました。ただ現状では、世間の住友林業に対するイメージは“木造住宅を売っている”というものが大半だと思います。だからこそ僕らが理解したことをコピーやビジュアルで適切に表現して、実は社会全体での脱炭素に大きく貢献していく企業だと伝えていく必要があると感じました」(小野さん)。

「人間に寄り過ぎない」コピー

一連のコピーを担当したのは、電通のコピーライター 筒井晴子さんだ。メインコピーである...

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