全世界で電気自動車(EV)への移行が進む中、EV充電器メーカーのプラゴは2021年、デザイン拠点となる「プラゴデザインセンター」を設立した。充電器のプロダクトデザインはもちろん、周辺環境と調和させるまちづくり、EVのある生活の行動デザインも提案する。
充電器が増えたら景色はどうなる?
プラゴは代表の大川直樹さんと、セイタロウデザインの山﨑晴太郎さんが共同で設立したEV充電器のメーカーだ。大川さんは電通出身で、2010年に家業である自動車用部品メーカーの大川精螺工業に入社。海外現地法人の設立に従事してきた。山﨑さんは2012年に大川精螺工業が製造するLEDソーラー街灯のブランディングに携わったことから、プラゴの設立に参画。チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)を務め、プラゴデザインセンターを設立した。
山﨑さんはこれまで、デザインの力が全く入り込んでいない業界で経営に参画してきた。エネルギー業界も同様で、「新たな社会インフラ構築を担うEV関連の企業に、デザインの発想が全く浸透していない」と危機感を感じたことが発端だ。「日本ではまだ、EVを利用したその先のユーザー体験がデザインされていない。充電器自体も機能が主体で、人間中心の発想になっていません。このまま雑多なデザインの充電器が増えていったら、街の景色はどうなるのか?という問題もある。日本では戦後に普及した電信柱や電線のある光景がありますが、これから充電器も街や地域を構成する要素になるからです(山﨑さん)。
大川さん自身がこれまでのキャリアを通じて「ものづくりの世界にデザインという無形価値を融合させたら面白いのでは」と考えていたことも、デザインセンターの設立を後押しした。
プラゴでは山﨑さんがプロダクトデザインを手がけたEV充電器を扱っているが、デザインセンターの活動はこの製品を売ることを第一の目的としているわけではない。EVのある社会全体をデザインし、ユーザー体験から逆算して社会実装していくことを目指す。そのためにはエネルギー業界全体にデザイン思考を根付かせることも重要であると考え、業界関係者向けのオンラインセミナーなども開催している。
これらの実現には...