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CREATIVE NEWS

「荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-」ほか、今月注目の展覧会

札幌国際芸術祭2017/Reborn-Art Festival 2017

今年も夏を通して行われる芸術祭が各地で始まっている。

その一つが音楽家として知られる大友良英が、2回目となるゲストディレクターを務める札幌国際芸術祭2017。8月6日からモエレ沼公園を始めとするさまざまな会場で開催される。

今回のテーマは「芸術祭ってなんだ?」。大友はゲストディレクターへの就任依頼が来た時に、この一文が思い浮かんだという。その後も芸術とは?それが祭りになるとはなんであるのか?と考え続け、開幕へ向けて行われてきたさまざまなイベントやレクチャー、ワークショップでこのテーマを取り上げてきた。

ここでいう「祭り」は単に歌ったり踊ったりの場を作ることではなく、参加する前と後とで世界の見え方が一変するくらいの、そんな強烈な場を自分たちの手で作り出すこと、と大友は定義する。そして今回はサブテーマとして「ガラクタの星たち」を掲げ、美術、音楽、演劇などさまざまなアーティスト77組が既存のジャンルに収まらない作品を札幌市内約35カ所に展開していく。星屑のように散らばる作品群を、訪れる人自らが発見し、それぞれを繋ぎ合わせ自分だけの星座をつくる──そんな芸術祭を体験してもらいたいと考えている。

石巻中心市街地と牡鹿半島を中心に、塩竃、松島、東松島、石巻、女川エリアにわたって、「アート」「音楽」「食」を楽しむことのできる総合型フェスティバル「Reborn-Art Festival」が9月10日まで開催中だ。

同フェスティバルのコンセプトは、Reborn-Art=「人が生きる術」。震災以後、多くの人は自分たちのまわりから本当の「人の生きる術」が失われかかっていることを、認識するようになった。いまもっとも必要なことは、この「人の生きる術」を蘇らせ取り戻すことにあると考え、同フェスティバルでは自分たちのめざすものを「Reborn-Art」と命名した。

そして、食や住や経済などの「生活の技」、アートや音楽やデザインの「美の技」、地域の伝統と生活の「叡智の技」など、さまざまな領域におけるReborn-Artを発見、あるいは再発見しようと試みている。アートの分野では、名和晃平、草間彌生、カールステン・ニコライ、ギャレス・ムーア、金氏徹平、鈴木康広、島袋道浩、皆川明などの国内外の40組のアーティストが参加する。

札幌国際芸術祭

大友良英+青山泰知+伊藤隆之《without records - mot ver. 2015》2015年 撮影:丸尾 隆一

《這い吠え熊》清水作(旭川):山里稔コレクション

クリスチャン・マークレー《Studies for Variations on a Silence(project for a recycling plant)Tokyo》2005年
(C)Christian Marclay/Courtesy of Gallery Koyanagi, Tokyo and Paula Cooper Gallery, New York

堀尾寛太 藻岩山での実験風景

Reborn-Art Festival

White Deer(Oshika)/名和晃平

真夜中に咲く花/草間彌生 Photo by Yukihide Nakano

フードもReborn-Art Festivalのテーマの一つ。

※すべて参考作品

札幌国際芸術祭2017(SIAFサイアフ2017)

8月6日~10月1日
モエレ沼公園/札幌芸術の森/札幌市立大学/北海道大学総合博物館/JRタワー プラニスホール/mima 北海道立三岸好太郎美術館/札幌大通地下ギャラリー500m美術館/狸小路商店街他
入場料:パスポート
当日券:一般2200円、高校生・大学生800円、道民1800円
◆問い合わせ→011-211-2314 札幌国際芸術祭実行委員会 事務局

Reborn-Art Festival 2017

開催中、9月10日まで。
宮城県石巻市(牡鹿半島、市内中心部)、提携会場:松島湾(塩竈市、東松島市、松島町)、女川町
入場料:リボーンアート・パスポート
一般当日券(2日間有効)3000円、同3日券4000円、学生・シニア当日券(2日間有効)2000円、同3日券3000円、地元割引1日券1000円
◆問い合わせ→info@reborn-art-fes.jp Reborn-Art Festival 運営事務局

妻・陽子をめぐる旅

荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-

写真家 荒木経惟の代表作ともいえる「センチメンタルな旅」を中心に、妻「陽子」をテーマに焦点を当てた展覧会が、9月24日まで、東京都写真美術館で開催中だ。

荒木の作品は、テーマや手法が多岐にわたることで知られ、これまでに500冊以上の写真集を上梓するなど、その制作意欲はいまだに尽きることがない。荒木の活動の原動力は妻「陽子」であり、「陽子によって写真家になった」と語っている。1960年代の出会いから1990年代のその死に至るまで、陽子はもっとも重要な被写体であり、死後もなお荒木の写真に多大な影響を与えてきた。

本展では、陽子を被写体にした作品や、その存在を感じさせる多様な作品を通して、荒木が重要視している被写体との関係性に迫り、その写真の真髄である「私写真」について考察する。1971年に出版された私家版の写真集に始まり、現在へと続いている荒木の私写真、そしてその写真人生そのものを追体験することができる展示となっている。

〈センチメンタルな旅〉1971年より 東京都写真美術館蔵

〈冬の旅〉1989-1990年より

〈三千空〉2012年より

荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-

開催中、9月24日まで。
東京都写真美術館
10時~18時 木曜・金曜20時(入館は30分前まで)ただし、7月27日~8月25日の木曜・金曜は21時まで。
休館:月曜(ただし9月18日は開館し、19日は休館)
観覧料:一般900円、学生800円、中高生・65歳以上700円、小学生以下 無料
◆お問い合わせ→03-3280-0099 東京都写真美術館

アイデンティティと向き合う ミヤギフトシの新作映像

ミヤギフトシ「How Many Nights」

自身の記憶や体験に向き合いながら、国籍や人種、アイデンティティといった主題を扱うアーティスト ミヤギフトシの個展が、ギャラリー小柳で開催されている。

ミヤギは20歳のときに渡米し、ニューヨーク市立大学で写真を学びながら、アートブックショップ「Printed Matter, Inc」に勤務。同時に制作活動を始めた。現在はアーティストランスペースXYZ collectiveの共同ディレクターを務め、今年2本の小説を文芸誌で発表している。

本展では、ミヤギが2012年から継続して取り組むプロジェクト「American Boy friend」の新作を公開する。20世紀初頭から第二次世界大戦後を生きた5人の女性たちの物語を紡ぐ約40分間の映像作品「How Many Nights」を中心に、それぞれの登場人物に関連する写真作品5点と、物語を象徴するオブジェのインスタレーション作品で構成される。

Futoshi Miyagi「How Many Nights」2017 single channel video,sound、38minutes(Still image.)
(C)Futoshi Miyagi/Courtesy of Gallery Koyanagi

ミヤギフトシ「How Many Nights」展

開催中、8月30日まで。
ギャラリー小柳 11時~19時
休廊:日曜、月曜、祝祭日、夏季休廊(8月11日~16日)
入場無料
◆お問い合わせ→03-3561-1896 ギャラリー小柳

日本初、ラップをテーマとする展覧会

ラップ・ミュージアム

ラップをアートフォームとして捉えた、日本初の展覧会「ラップ・ミュージアム」が、8月11日から市原湖畔美術館で開催される。

アメリカ・ニューヨークで、ヒップホップ、ラップが生まれて約40年。そして日本でラップが生まれてから約30年が経とうとしている。現在では多種多様なラップ、ラッパーが存在。ラップのバトルを行うテレビ番組も若い世代に人気が高く、「ラップブーム」とも呼べる現象が起きている。

本展は、ラップそのもののつくり、構造に注目し、映像等で見せる「ART OF RAP」と、ラップという行為とその周辺の文化的実践を紹介する「RAP PRACTICE」を軸に構成する。「ART OF RAP」では、いとうせいこう&TINNIE PUNXからKOHHまで、ラップのリズムの構造を可視化させた映像作品(制作協力:伊藤ガビン、大谷能生)のほか、ラッパーが実際に使用したリリック帳も公開。「RAP PRACTICE」では、ラップが生んだグラフィック、パフォーマンスに注目するほか、地域コミュニティとラップの関係について紹介する。

展覧会ロゴ。企画協力に、荏開津広、ダースレイダー、磯部涼。

90年代の日本語ラップにまつわるフライヤー
提供:ファイルレコード

リリック帳 提供:SHING02

ラップ・ミュージアム

8月11日~9月24日 市原湖畔美術館
平日:10時~17時 土曜・休前日:9時30分~19時 日曜・祝日:9時30分~18時
休館:月曜(祝日の場合は翌火曜日)
観覧料:一般800円、大高生・シニア(65歳以上)600円、中学生以下無料
◆お問い合わせ→0436-98-1525 市原湖畔美術館

グラフィティ・アーティストがとらえたいまのアメリカ

バリー・マッギー+クレア・ロハス『Big Sky Little Moon』

80年代後半、グラフィティ・アーティストとして活動をスタートし、アート界で注目を集めたバリー・マッギーとパートナーであるクレア・ロハスによる展覧会「Big Sky Little Moon」が、10月15日までワタリウム美術館で開催中だ。

21世紀、アメリカ社会は大きく揺れ動き、現在では、世界中の都市に緊迫した空気が流れている。制御のない自由をストリートに求めて制作を続けてきたバリー・マッギーが、2017年の東京で発表する展覧会のタイトルは「Big Sky Little Moon」。ホームレス、浮浪者、街が排除しようとしているもの、隠そうとしていること、存在していないふりをさせられているものを主題に作品をつくってきた彼が、今の時代をどのようにとらえて表現しているのか。本展では長年のパートナー、アーティストのクレア・ロハスの作品も展示する。

バリー・マッギー 無題 2014年
Photo:Jay Jones Courtesy of Ratio 3, San Francisco and Cheim & Read, New York

バリー・マッギー 無題 2015年、Photo:Jay Jones Courtesy of Ratio 3, San Francisco and Cheim & Read, New York

クレア・ロハス 無題 2016年

バリー・マッギー+クレア・ロハス展 Big Sky Little Moon

開催中、10月15日まで。
ワタリウム美術館 2階、3階、4階&野外展示
11時~19時(毎週水曜日は21時まで延長)
休館:月曜(9月18日、10月9日は開館)
入場料:大人1000円、学生(25歳以下)800円
◆お問い合わせ→03-3402-3001 ワタリウム美術

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