無機的なものから見出す「生」の瞬間
「Live / Things」
建築写真を中心に活動する新良太と、広告写真を中心に活動する吉田多麻希ー2人の写真家による写真展「Live / Things」が、9月17日までライカプロフェッショナルストア東京にて開催中だ。
新良太は写真集「TOKYO SKYTREE」、「Not Found」を上梓。2010年には、ポスター「TALKING THE DRAGON INOUE TSUGUYA GRAPHICS」で、ADC制作者賞を受賞した。吉田多麻希は広告写真を中心に商業写真を撮影しながら、日常あたりまえに存在する生き物や物質の存在や表情に興味を持ち継続的に作品制作を続けている。
今回の展示におけるテーマは、「光や氷、鉄など物質やマテリアルが成し得る静の中にある動と、生物が生み出す動の動、相反する被写体の変化と対比」である。展示には、アートディレクター井上嗣也がキュレーションで参加しており、試行錯誤を重ねて創り出した、生命的な躍動を見出された光や物質、マテリアルなどを表した"Things"、そして、生物である"Live"の呼応を感じる作品の計23点を展示する。



「Live / Things」より。
プロデュース:丸橋裕史 協力:井上嗣也
「Live / Things」(新良太、吉田多麻希) | |
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開催中、9月17日まで。 |
総制作費約17億円の作品の裏側を見る
オラファー・エリアソン 視覚と知覚
デンマークの現代美術家 オラファー・エリアソンに追ったドキュメンタリー映画が、8月5日よりアップリンク渋谷、横浜シネマジャック&ベティーほか全国劇場でロードショーされる。
2008年に総制作費約17億円をかけ、世界55カ国の約140万人が鑑賞、75億円超の経済効果を記録した、ニューヨーク市イースト川での巨大な滝のインスタレーション「ザ・ニューヨークシティー・ウォーターフォールズ」。その制作過程の模様を中心に、2009年に金沢21世紀美術館で開催された個展の出展作品、ドイツのスタジオでの制作風景を映し出す。
また作品のみならず、創作や講演で世界を駆け巡る姿にも迫り、エリアソンが視聴者に語りかけながら行う視覚的実験や、"視覚と知覚"、"自然と人工"、"理論と哲学"、"主観と客観"などさまざまな概念の境界線を巧みな言葉で飛び越え、芸術論を展開する。
本作品は、現代アートシーンの最重要人物オラファー・エリアソンが仕掛ける、時間と空間、観客と映画のアート・エクスペリエンスと言えるだろう。



監督:ヘンリク・ルンデ、ヤコブ・イェルゲンセン
出演:オラファー・エリアソン 2009/デンマーク/77分
(C)Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark
オラファー・エリアソン 視覚と知覚 | |
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8月5日よりアップリンク、横浜シネマジャック&ベティーほか全国劇場ロードショー。 |
深澤直人の思考を立体化した国内初の個展
AMBIENT
深澤直人がデザインする生活の周囲展
世界的に活躍するプロダクトデザイナー、深澤直人の国内初個展「AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展」が、10月1日までパナソニック 汐留ミュージアムで開催中だ。
世界を代表するブランドのデザインや、国内でも多くのデザインやコンサルティングを多数手がけている深澤直人。人間の、意識していないときの行動の中にデザインのきっかけがあることを見出し、それを「Without Thought(思わず)」と命名。「行為に相即するデザイン」「意識の中心」「ふつう」「輪郭」「典型」など、自らのデザイン哲学をこれらの言葉で表わすと共にデザインの具体を通してその実践を続けている。
本展では、展示室という空間のなかに、イスや家電、住宅設備など生活のためのデザイン作品を配置することで、深澤の思考を立体化。深澤直人が生み出す生活の空気を体感することができる。

《Cha クリーマー》
ALESSI、2015年、アレッシィショップ青山 蔵

《モディファイ スフィア》
パナソニック株式会社、2012年

《HIROSHIMA アームチェア》
マルニ木工、2008年、株式会社マルニ木工蔵
AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展 | |
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開催中、10月1日まで。 |
今の時代における芸術とは
2D(にじげん)プリンターズ
芸術:世界の承認をめぐる闘争について
芸術は有用性をもたない浮世離れした無用の長物なのか、あるいは芸術ならではの特殊な有用性を世界に向けて発揮するものなのか。3Dプリンターの出現によって生まれたこの問いを実際に比較展観して考察する「2D(にじげん)プリンターズ 芸術:世界の承認をめぐる闘争について」が、9月18日まで栃木県立美術館で開催中だ。
本展は、21世紀の今日もなおこのような自律的価値が有用なのか、あるいは批評性を持った社会的価値こそが有用なのか、写真、版画、映像、印刷物などの複製技術と絵画、ドローイング、彫刻など約200点における手わざとを比較しながら、美術の面白さと恐ろしさを共に考察する。
参加作家は、福田美蘭、村上華子、折元立身、三島喜美代、橋本聡、郭徳俊、一原有徳、オノレ・ドーミエなど。

三島喜美代「COPY-NEWS PAPER-F」
1980年 陶、シルクスクリーン 36×26×10cm

福田美蘭「ルノワール"日なたの裸婦"」
1996年 油彩、板、額縁 35×29cm(5点組)
賛美小舎 上田コレクション

村上華子「世界の終わりは来なかった」
2014年 紙に木版印刷 70×50cm 協力:El Relanpago 木版印刷所 個人蔵

折元立身「[メールアート]performance I make up and become ART-MAMA[TOKYO]」
2016年 紙、オフセット 99.5×70cm 個人蔵
2D(にじげん)プリンターズ 芸術:世界の承認をめぐる闘争について | |
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開催中、9月18日まで。 |
東南アジアの注目アーティストの作品が一堂に会する展覧会
サンシャワー:東南アジアの現代美術展
1980年代から現在まで
人口約6億人。経済発展目覚ましい東南アジア地域の現代アートには、世界から大きな注目が集まっている。ASEAN設立50周年にあたる2017年、国内過去最大規模となる東南アジア現代美術展「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」が、10月23日まで国立新美術館と森美術館で開催中だ。
タイトル「サンシャワー」は、東南アジア地域では頻繁にみられる気象現象であり、紆余曲折の歴史を経てきた同地域を表すメタファーでもある。そんなタイトルを持つ本展は東南アジアの現代アートの集大成ともいえるもの。開催にあたり、ASEAN10カ国16都市を、現地若手キュレーターを含む14名のキュレトリアル・チームで2年半にわたり調査を実施。アーティストの創作活動の現場、ギャラリーやアート関係者など400件を超える訪問から知り得たファーストハンドの情報をもとに、86組のアーティストを選定した。
自由の希求、アイデンティティ、成長とその影、コミュニティ、信仰と伝統、歴史の再訪など、東南アジアにおける1980年代以降の現代アートの発展を複数の視点から掘り下げ、国際的な現代アートの動向にも照らしながら、そのダイナミズムと多様性を9つのセクションで紹介する。

リー・ウェン《奇妙な果実》
2003年 Cプリント 42×59.4cm

ティン・リン《アートの生物学》
(「00235」シリーズより)1999年 ミクストメディア、綿のシャツ 53×53cm
Courtesy:Martin LeSanto-Smith

フェリックス・バコロール《荒れそうな空模様》
2009年 インスタレーション サイズ可変

ナウィン・ラワンチャイクン《ふたつの家の物語》
2015年 インスタレーション 387×794×267cm
Courtesy:Navin Production, Chiang Mai, Thailand
サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで | |
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開催中、10月23日まで。 |