デザインの背景にあるものを伝えたい 新しい試みに挑むJAGDA新人賞展
JAGDA新人賞展2017
日本グラフィックデザイナー協会による「JAGDA新人賞展2017」がクリエイションギャラリーG8で開催中だ。『Graphic Design in Japan』出品者の中から、39歳以下の今後の活躍が期待される有望なグラフィックデザイナーに贈られる本賞。
本年度の新人賞対象者145名の中から選ばれたのは、玉置太一さん、三澤遥さん、八木義博さんの3人である。個性が異なる3人の展示は、従来のJAGDA新人賞展とは少し違う趣になっている。「3人がバラバラに展示し、自分をアピールするのではなく、全体が一つに見えるように空間と構成を考えていきました。イメージしたのは、デザインの研究を深めるような場にすることです」と、3人は話す。
会場に設置されたのは、1辺420mmの正方体の組み立てユニットだ。よく見ると、その一つひとつにはガラスのケースがついていたり、引き出しがついていたり、それぞれの作品が最適に見える形でアレンジが施されている。そして、少しずつ違いがあるものの、空間全体の印象は統一されている。
「従来は受賞者の作品をできるだけ多く見せる展示が多かったと思いますが、今回は3人が携わったプロジェクトをきちんと、そして魅力的に見せたいと考えました。そこで展示作品数を絞って、それぞれの作品を理解した上でベストな見え方となるオリジナル什器を、三澤さんを中心に考えていきました」。
展示をする上で、3人が重視したのは空間の在り方。そして、それぞれの作品を制作したときの考え方や思いをきちんと伝えることだ。そこで、本展では3種類のチラシを制作した。シンプルなチラシの表面にはグリッド線が引かれ、ところどころ升目にコピーが書かれている。実はこのチラシは、3人が展示する3つの空間をそれぞれ投影したもの。コピーが書かれた升目は空間に置かれる展示什器を示している。
そして、升目に書かれているのは、展示している作品の解説だ。日本デザインセンター コピーライター 磯目健さんがそれぞれの作品についてヒアリングし、コピーとして仕上げた。「会場でこのチラシを見ながら、作品を見ていただけるとうれしいですね。チラシにはほんのわずかなことしか書かれていませんが、その言葉が作品を見る人の想像力をかきたてるものになるといいなと思っています」。
それに伴い、JAGDA新人賞展ではギャラリーツアーを実施(※6月9日開催分は定員となり締切)。ギャラリーで実際に作品を鑑賞しながら、受賞者がぞれぞれの作品を解説する。
こうした試みの背景には、「若い人や一般の人たちに、広告やデザインの面白さをもっと知ってもらいたい。この展示を業界内のものだけにとどめたくない」という3人の思いがある。「展示企画を進める中で、3人がそれぞれの考え方を話しているときが一番面白かった。デザインとしてのクオリティも大事ですが、それぞれの内面にどんなものがあって、どんな軌跡を経てこのデザインに至ったかを、こうした試みで少しでも知ってもらえたら」という。
ギャラリーツアーの他、6月13日には佐藤卓さんを招いて、トークイベントも実施する(要申し込み)。また、それぞれが制作したポスター(非売品)などを、会場限定で特別に販売する。さまざまな形でデザインをひもとく試みに挑んだ本展は、6月29日まで開催されている。また2回目のギャラリーツアーが、6月26日午後7時10分~8時10分で開催されることが決定した。希望者は、同ギャラリーで予約(TEL:03-6835-2260)のこと。定員は40名。本展は7月に大阪で、その後は愛知、静岡、滋賀、熊本、新潟を巡回予定だ ...