無印良品のWebサイトや雑誌『GINZA』など、デジタル領域を中心に幅広い分野のアートディレクションを手がける阿部洋介さん。その中で感じるアートディレクターの仕事の変化とは。
tha 阿部洋介(あべ・ようすけ)
1973年東京生まれ。武蔵野美術大学卒。新聞社、ビジネス・アーキテクツ、フリーランスを経て、2007年よりtha ltd.に参加。無印良品のキャンペーン、日清食品のWebサイトなどを手がける。2014年よりマガジンハウスの雑誌『GINZA』のアートディレクターに就任。
動画を中心に設計した無印良品のWebサイト
今は“メディアの動乱期”だと思っています。「映像なのか写真なのか」「どのメディアでどのサイズで展開するのか」といった枠組みが定まっていない。選択肢の中から選ぶだけでなく、選択肢が変化し続けています。出しどころが変われば、コンテンツも変わりますから、制作に入る前の枠組みの判断がますます重要になっています。
最近手がけた仕事に、無印良品の旅に関する商品カテゴリー「MUJI to GO」を動画で紹介するサイト「MUJI to Go 2015」があります。まず良品計画さんにこれを機にInstagramの運用をスタートしてもらうことを提案し、動画もInstagramで見やすいフォーマットに最適化しました。商品ごとに独立した15秒の正方形の動画です。一方でWebサイトや店頭では16:9のフォーマットが最適です。そこで商品ごとの正方形フォーマットの短編を繋ぎ合わせた長編も作りました。単体で見る商品紹介のカタログ的な要素に加え、ストーリー性を感じられるようなもうひとつの見え方になっています。さらに同素材で店頭バナーやリーフレットへの展開も考えました。こうしてアウトプットするメディアを先に考えることによって、コンテンツの形態が決まっていくんです。イメージやビジュアルをどうするかということに注力するだけでは成り立たなくなってきていると思います。アートディレクターの仕事の幅は予想以上に広がっていると感じます。
アウトプットするメディアで使う筋力を変える
まだ無印良品があまり浸透していない世界各国に向け、無印良品の考え方を紹介する「What is MUJI?」も動画中心のサイトです。ここではさらに「音」を意識しています。説明文は多国語対応にしていますが、動画はノンバーバルで共通です。
動画は、商品を使う時に出る音を際立たせるようにSEをつけました。そうすることで、商品の素材感、質感がより強く前面に出ます。視覚情報だけではなく …