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伝統ある巨大百貨店が進める「デジタルシフト」とは

三越伊勢丹ホールディングス×アイ・エム・ジェイ

三越の創業は1673年、伊勢丹の創業は1886年。伝統ある二つの百貨店が統合してできた巨大企業である三越伊勢丹ホールディングスは、デジタル時代で大きな変化の必要性に迫られている。百貨店にとってのデジタルシフトとは、また巨大組織でデジタルシフトを進める秘訣とは。三越伊勢丹ホールディングス 営業本部マーケティング戦略部マーケティング政策担当長 部長の柴田廣次氏とアイ・エム・ジェイ(IMJ)取締役COOの加藤圭介氏が議論する。

(左)三越伊勢丹ホールディングス 営業本部マーケティング戦略部 マーケティング政策担当長 部長 柴田廣次 氏
(右)アイ・エム・ジェイ 取締役COO 加藤圭介 氏

これまでの伝統の枠に縛られないマインドセットが重要

柴田▶ 三越伊勢丹ホールディングスは、百貨店としての規模が大きく、品揃えや接客の質の高さを売りにしてきました。ただ「デジタルシフト」視点で見ると、その規模が足かせになることも多い。巨大組織ゆえに、店舗を超えて、大量の顧客情報やメディア情報を共有し合う仕組みづくりがなかなか進んでこなかったのが現状です。そこで今年、情報戦略本部を新設し、顧客データなどの情報に特化したデジタルシフトを進めています。一方、私の所属する営業本部マーケティング戦略部では、店舗や販売員など現場の営業実態に即したデジタルシフトを進めているところです。

加藤▶ 御社のように規模が大きく、伝統のある企業の変化について、非常に興味を持っています。というのも、最近さまざまな企業のお話を伺っていると、どこもデジタルシフトが大事だと認識しているものの、そのプロセスにとても悩まれている。トップのコミットメントは大事ですが、実際のところ、トップから現場に下りるまでに動きが止まってしまうこともあります。関わる人数も多い中、柴田さんはどのような手段でデジタルシフトを進めているのでしょうか。

柴田▶ 営業を含めてグループ全体の指針となる「マスターディレクション」を制作しています。そのシーズンのキャンペーンからマーチャンダイジングに至るまでの活動の方針になるものです。その1ページ目で「デジタルシフト」について述べています。ここに書くことで、現場ではどのようにデジタルを活用していくか、とアイデアを拡げていけます。

加藤▶ 社内のマインドセットをされているのですね。

柴田▶ 百貨店には、これまでの伝統の中で培ってきたマインドが根強くあります。三越伊勢丹ではクレジットカードでお支払いをいただくお客さまには、カードを受け取り、後ろに下がって清算をする。それは、お客さまへの丁寧なおもてなしの心のあらわれ。「その場で清算してほしい」と思われる方もいるのに、お客さまと強い繋がりを持つことを大事にする精神が根強くある例です。こうした、これまでの「三越伊勢丹らしさ」をいかに現在に合った形で表現していくか。そのためには、“ 今” 社会がどのように動いているかを理解し、その中で今後の全社の指針を、社内で密に共有していくことが大事です。

デジタルシフトの本質は本当の“顧客中心主義”への変化

加藤▶ 最近ではCCCさんとの提携など、他社と協業している事例もありますが。

柴田▶ 会社として、3つのシフトを掲げています。1つ目が顧客軸シフト、2つ目がデジタルシフト、3つ目がアライアンスシフトです。変化のためには、自前主義から脱却しなければいけないと考えています。

加藤▶ 「顧客軸シフト」とはどういうことですか。

柴田▶ これまでの百貨店の最大の価値は「よいもの」が揃っていること、それを丁寧に接客して販売すること。しかし、品物はどこでも買える時代においては、「体験」も含めた「よいもの」を販売する必要があります。その「体験」を考えるために、お客さまをどれだけ知っているのか、あらためて問うことになったのです。実際のところ、お客さまを知るための客観的な情報は、三越伊勢丹の「エムアイカード」の買い物履歴でしかわからなかった。「次に何をお求めになりたいのだろう」と想像するデータとしては、心もとないものです。カードの履歴以外で、新宿伊勢丹店で購入されたお客さまが、六本木の「イセタンサローネ」では何を購入しているのか。そういった顧客とのエンゲージメントが弱い。もしかしたら、我々はお客さまについて、想像していただけではなかったのだろうか。そんな深い課題認識があって、この「顧客軸シフト」の方針になっています。

加藤▶ 「もの」の提供から「体験」の提供に変革していくのに「顧客軸シフト」は大切な要素ですね。しかし、特に小売業界は昔から「お客さまのために」という思想は強かったように思いますが。

柴田▶ どこの小売業の企業理念にも書いてありますね。

加藤▶ しかし、デジタル化によって企業は改めて「顧客中心主義」を徹底することが求められています。つまり原点回帰ですね。

柴田▶ 商品ありきの発想ではなく、お客さまから考える。売り場においてもお客さまへの「体験」を提供する場に変わることを、進めています。伊勢丹新宿店には「cocoiku(ココイク)」という子供向けに社会活動やデジタルへの関心を高める学校をつくりました。商品を置けば一番売れるだろうと言われてきた場所に学校をつくるのは思い切った決断でしたが、お客さまと、子供服を売る以外の接点を持つ場となっています。

具体的な課題をもとに立場の異なる人たちで考え続ける

加藤▶ 「顧客中心主義」を実践した売り場をつくってしまえば、自ずと社員の意識も変わっていくのでしょうね。

柴田▶ 私は、決して「脱・百貨店」ではなく、「百貨店を極めること」だと思っています。ただ、自慢の品揃えの「品」が体験になったり、丁寧な接客の「丁寧さ」がデジタルを用いて形を変えたりすることはあるでしょう。

加藤▶ 顧客のインサイトをしっかり捉え、自社が提供すべき「体験」を考えた時に、自社に足りないパーツが見えてきて、場合によっては提供するサービスの幅が広がったり変化することもあるかと思います。

柴田▶ これだけ変化が必要となったときに、マーケティング・商品・ITなど部門の違う人たちが、同じ課題意識を持ち、一度に意識を変えるのは困難です。そこで、具体的な企画を宿題に考えてみることを大事にしています。売り上げは毎年アップしているけれど、売り場を変えたことで満足度が下がっている企画を題材に、プロジェクトを組む。マーケティング部門だけで考えると、売り上げを伸ばすことに意識がいきがちなところを、他部門の人たちを呼んでさまざまな方向から考えてみます。

加藤▶ 具体的な課題をもとに立場や考えが異なる人たちで繰り返し考えるのは、とてもいい方法ですね。大きな企業・伝統的な企業ほど変化が難しいと思っていますが、やはり目の前の課題を一つひとつ解決していくことが、一番の近道なのかもしれません。

編集協力:アイ・エム・ジェイ

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