今年、20周年を迎えたYahoo! JAPAN。膨大なPV、ユーザーを誇るだけに、そこで得られるデータ分析・解析は、多くの企業にとって活用できる知見と言える。ヤフーでは同社のデータマーケティングの知見をより多くの人に生かしてもらおうと4月、データを駆使するマーケターを支援する情報発信サイト「Insight for D」を開設した。
ヤフー マーケティングソリューションズカンパニー
マーケティング本部 本部長 中島みき氏
20年で得たノウハウをより多くの企業に
消費者のメディア接触行動が複雑化し、価値観も多様化する現代。従来のマスマーケティングだけでなく、個々の消費者の価値観を把握し、きめ細かく対応していくマーケティングへのシフトが必要とされている。そこで強力な武器となるのがデータだ。しかしながらデータを戦略的にマーケティングに活用する知見やノウハウの不足で課題を抱えている企業が多い。
こうした企業課題の解決に貢献しようと、ヤフーは4月5日、データを駆使するマーケターを支援する情報発信サイト「Insight for D」を開設。データマーケティングを切り口に、独自のマーケティングソリューション情報を発信していく。
「ヤフーが日本で事業を開始して20年。Yahoo! JAPANは、日本のネットユーザーの約8割に利用され、生活インフラとして浸透するまでになりました。そして、この20年の事業で得られたユーザーデータの分析を行ってきたことにより、私たちは“日本のユーザーを最も理解している”という自負を持っています。こうした知見をより多くの企業のマーケターの方たちに活用していただきたい。そんな思いをもって、サイトの開設に至りました」とヤフー マーケティングソリューションズカンパニー マーケティング本部の中島みき本部長は話す。
かつてマーケターから見たヤフーとは、圧倒的なPV数を誇るYahoo!JAPANの広告メニューを提供してくれる存在であった。しかしながらマーケターがデータを活用し、よりパーソナルなアプローチへとシフトしていく中で、ヤフーの持つマルチビッグデータ活用に対するニーズは高まってきた。「3年前から企業ニーズに対応し、広告商品の提供だけでなく、マルチビッグデータを活用してマーケティング活動を支援するデータソリューション事業に力を入れてきました。『Insight for D』では、この事業を介して得られた知見もベースになっています」(中島氏)。
ヤフーが推進してきたデータソリューション事業は、単に自社の広告メニューの価値を高めるための狭義の利用ではない。中島氏は「企業が考える消費者の態度変容のプロセスにおいて、広告での認知獲得、商品を購入してもらうフェーズは全体の一部。ヤフーではデータの分析をベースに、消費者の態度変容のあらゆるプロセスを一気通貫で支援できる体制を整えてきました」と話す。
データマーケティングを支援する、ソリューション提案力を強化してきたヤフー。「提案に際してはデータ活用の専門家集団が必要です。そこでデータインテグレーションを担うチーム、データマーケティングのシナリオ設計を担うチームを立ち上げ、あらゆる課題に企画の実現まで対応できる体制づくりを整えてきました。企業によってデータ活用の課題は大きく異なります。社内にデータ分析・活用の専門家を擁することで、課題を聞いた上で、課題を解決するために最適なソリューションを提案することが可能になりました」。
世の中の現象は全てデータに現れる
データ活用の知見が企業を大きく進化させる様を見てきた中島氏。より多くの企業がデータを活用できる環境をつくり、日本のマーケティングの底上げに貢献できれば…。そんな思いが、今回の「Insight for D」の立ち上げにつながった。だからこそ、データ活用のプロフェッショナルにしか分からないサイトにはしたくないという強い意志がある。
「データ活用のハウツー紹介ではなく、より多くのマーケターの方々が戦略企画のインスピレーションを得られるようなコンテンツづくりを重視しています。データには世の中で起きている、あらゆる事象が現れます。だからこそ私たちはデジタルマーケターの方だけでなく、商品開発などマーケティングに関わる多くの方々にとってデータは有用だと確信しています。しかし、現在はデータから気付きを得られる人は分析ができる一部のマーケターに限られています。ビッグデータを分析し、解説することで、その有用性に興味を持ち、仕事に生かしていただける方を増やしていければと、私たちは考えています」。
「Insight for D」の記事カテゴリは現在、「デジタルマーケティング入門(データマーケティングの実践に役立つコンテンツ)」「マーケティング事例(企業のマーケティング実践例)」「市場・トレンド(国内外で話題になっているマーケティングに関するトピックス)」の3つ。具体的には「ハロウィンに『ギョーザの皮』が売れる理由」といった消費行動に関わる記事から、「なぜ企業のデータ活用は失敗してしまうのか?」「『そもそも論』『どんでん返し』に負けないプロジェクトマネジメントのコツ」といった、データマーケティングの知見のある人にも読み応えがある記事までバラエティに富んでいる。今後さらに取り扱う記事の幅を広げ、カテゴリも充実させていく予定だという。
まだサイトは立ち上がったばかり。中島氏は「継続的な情報の発信を通じ、企業の規模を問わず、あらゆる企業のマーケターに、データの有用性に気づきを感じてもらえる場をつくるような活動をしていきたい」と今後の展望を語った。
「後で読む」ではなく、「今すぐ読みたい」と思ってもらえる記事内容、さらに、気になったその場ですぐに読める記事ボリュームで制作されている「Insight for D」(http://d-marketing.yahoo.co.jp/)。また、ヤフーが運営してはいるが他社の取材記事や情報も載っており、フラットな視点での編集にこだわっている。「20周年を迎えるYahoo! JAPANの運営を通じて得た、データ活用の知見を『Insight for D』を通じてより多くの企業の方に生かしていただければ」と中島氏は話す。