マーケティングテクノロジーを導入する企業が急速に増え、それをいかに活用し売上を伸ばしていくかがマーケターの課題になっている。そんな中、GEヘルスケア・ジャパンはマーケティングオートメーションツールにsimpleshowの解説動画を活用しデマンドジェネレーション活動の効率化に挑戦している。
医師に好評を得ている、GEヘルスケア・ジャパンの解説動画
難解なトピックを共感をもたせる物語に
ドイツに本社を置くsimpleshowの「解説動画(Explainer Video)」は、難解なトピックを、わかりやすく共感できる物語へ仕立てる独自技術が特長だ。人の「手」でシンプルなモノクロイラストを動かし、2~3分の映像でテンポよく解説する。現在9カ国11拠点に展開し、世界で4500本以上の動画を制作。ドイツ同様社会が成熟し、製品やサービスが高度に進化した日本へ昨年進出。国内の顧客数はすでに100を超える。
ここでは、解説動画を利用している、GEヘルスケア・ジャパンの小山博之氏とsimpleshow Japanの吉田哲氏の対話からその活用シーンを紹介する。
市場環境が変化新たな層へのリーチが課題に
―「解説動画」を制作しようと思ったきっかけは何ですか。
小山▶ 日本の医療機器業界はいま、市場環境の変化によりマーケティング戦略の転換を図らなければならない状況にあります。理由の一つが、「超高齢社会」の到来。高齢者が増えると今の医療環境及び医療費では対応しきれないと予想されることから、国が医療コストを下げながら医療品質を上げるための取り組みを開始しました。これまで誰もが大病院中心に受診しようとする傾向から、身近な「かかりつけ医」での初期診断・治療において高い水準の医療提供が施される体制への変化が求められています。従来、私たちのソリューションは主な提供先であった大きな医療施設で導入されるケースが多かったのに対して、これからは診療所やクリニックなども含めたより広いターゲットにリーチして充実した医療サービスを提供することが命題になっています。しかし、各医療施設の持つ課題にインパクトを与えるソリューションでないと簡単に投資をしていただけません。そこで、説明が難しい医療機器のソリューションとその成果を、いかにわかりやすく顧客の課題に沿って、差別化ポイントと共に伝えられるかが重要になっているのです。コミュニケーション手段としてsimpleshowの「解説動画」を選んだ大きな理由は、動画の制作だけをしてくれる会社が多い中、科学的に裏付けされた魅力的なコミュニケーション施策を活用して制作のコンサルテーションをしてくれる点です。
吉田▶ 日本でも医療業界からの制作依頼が増えているのですが、GEヘルスケア・ジャパンさんは特に挑戦する精神が強い会社だと、感じています。最近ではマーケティングオートメーション(MA)の中で解説動画を活用されていますよね。
小山▶ グローバルでマルケトのMAツールが導入されたのを機に、いままで以上にデジタルを活用してワントゥワンマーケティングをスケールできるよう取り組んでいます。チームの中でデマンドジェネレーションをより獲得するためにはどうしたらいいのか。色々な施策を実験的に試している中で、説明が難しい我々のソリューションの強みをわかりやすく顧客課題の視点から理解できるようなコンテンツを置いたら、コンバージョンが上がるのではと考え、ランディングページに解説動画を組み込むことを決めました。
デジタルに留まらないリアルな場への活用拡大も
―導入後の成果はどうでしょうか。
小山▶ 3つのソリューションの解説動画をつくり、MAツールを活用したメールキャンペーン施策のコンテンツにしたのですが、結論として、他のコンテンツに比べて解説動画のコンバージョンは数倍高かったという結果がでています。また、後日当社Webポータルでのインバウンドマーケティング施策としても活用しました。最も販売活動に寄与したのは、「産婦人科向けプレミアム超音波診断装置」でした。この装置のコミュニティーに登録している先生約1000人にメールを配信したところ、開封率32%、コンテンツ視聴率39%、アンケート回答率14%という高数値を得ました。アンケートに答えていただいた19人のお客さまからは、4件の新しいSQLが生まれ、最終的に営業は2件の受注を得ることができました。このソリューションは数千万円もする高価な機器にも関わらずデジタル上のマーケティング活動でチャンスをつかめることに非常に驚きました。また、X線装置における線量最適化支援ソリューションの解説動画活動でも開封率36%、コンテンツ視聴率21%、アンケート回答率4.2%と良い結果が得られた上に、アンケートフォームから得た情報を経てデモンストレーションのスケジュール化までMAツールで実施することができて、マーケティングおよびセールス活動の生産性を上げることに成功しました。
吉田▶ simpleshowは人の心理に着目して研究しているのですが、「理解」と「共感」のかけ算で“自己効力感”を導き出せるということが実験により裏付けされています。自己効力感とは心理学用語で、「自分でも理解できそう、実践できそうだ」と思わせる効果が高いということです。今回の場合、ターゲットは医師をはじめとした専門家など、知識と経験をお持ちの方々ではありますが、やはり機器自体の技術の方が先んじているわけで。解説動画がそうした自己効力感を生んだことで、一歩踏み出すきっかけをつくれたのだと考えています。
小山▶ MAのコンテンツ以外に、イベントや展示会でも解説動画を活用し、最近ではポータルサイト上のインバウンドマーケティングにも活用しています。商品のコモディティ化はどの業界でも言われる問題ですが、医療機器業界でも同様の課題を抱えています。そんな中で選ばれるためには、より明確に自分たちの商品がお客さまの課題にインパクトを与え、ベネフィットにつながるかを説明することが求められています。simpleshowの解説動画は、他社商品との差別化を図る一手としても非常に有効だと考えているので、今後も挑戦をしてみたいです。
(左)simpleshow Japan 代表取締役 吉田 哲氏
(右)GEヘルスケア・ジャパン マーケティング本部 アドバタイジング&プロモーション部 部長 小山博之氏
編集協力
simpleshow Japan http://simpleshow.com/jp