アイ・エム・ジェイ(以下IMJ)が主催するデジタルマーケティングカンファレンス「IMJ CONFERENCE2015(I・CON)」が11月11日、東京・六本木ヒルズで行われた。「顧客の心をとらえるデジタルマーケティング」をテーマに、データを活用した顧客体験価値の向上事例や、そのために必要な組織など、多岐にわたってセミナーやパネルディスカッションが行われた。
冒頭に開会宣言として今後の方向性を示した、IMJの竹内真二氏(左)と、加藤圭介氏(右)。
高まるデータ活用の重要性 必要なのは組織・テクノロジー・人
IMJが主催するカンファレンス「I・CON」は今回で4回目の開催。過去最大規模、延べ580社970名の申し込みの中、各種プログラムが行われた。
冒頭にIMJ 代表取締役CEOの竹内真二氏が登壇し、IMJの現状紹介とともに“企業がいまデジタルマーケティングについてどう向き合っているか”を説明した。企業のデジタルマーケティング部門へのアンケートでは、54%がデジタルマーケティングの重要性が増していると答え、中でも戦略策定に最も課題を感じているという結果であった。「デジタルマーケティングは年を追うごとに高度になっている。現状では個々人のスキルアップよりも組織間の連携で対応しているものの、その効果は一部にとどまる」と言及し、「我々は、デジタルマーケティング組織に必要なクリエイティブ、データ、マーケティングテクノロジーの3つを組み合わせて企業の課題解決のサポートをしていきたい」と結んだ。
続いて、取締役COOの加藤圭介氏が登壇。ビッグデータ活用の重要性が高まっているものの、充分に活用できている企業が少ないと指摘。その原因は組織・テクノロジー・人だという。「データを活用しようにも、複数部署にデータが散在しているため、デジタルマーケティングを推進していくための体制をつくる必要がある。また、進化し続ける各種マーケティングツールを使いこなし、データを活用できるスキルを持った人間を育てなければならない。企業がこれらの課題を解決するサポートを行っていく」と述べた。
デジタルシフトの中で感じたビジネスの変化と手ごたえ
パネルディスカッションでは、“魅力ある顧客体験を提供できる企業だけが生き残る”というテーマで、全日空の西村 健氏、資生堂ジャパンの笹間靖彦氏、キヤノンマーケティングジャパンの平林泰直氏がパネリストとして登壇。モデレーターをIMJのCMO 江端浩人氏が務めた。各企業の最新事例を交えつつ、「顧客接点の重要性とデジタルの役割・位置付け」「社内風土のつくり方」などについて話し合った。
江端氏は冒頭、ワールドマーケティングサミット2014と2015を引き合いに、海外から見た日本の位置づけを「エレクトロニクスで世界をリードしていた日本だが、新しい技術の登場によって戦略の見直しを迫られている。デジタル技術はビジネスの牽引となることもあるが、時には既存ビジネスを破壊することもある。ただ、もはや企業はデジタル化をする・しないを選択する状況ではなく、デジタル化しなければ生き残れない」と指摘した。
顧客接点におけるデジタルの役割・重要性について、西村氏は「我々は、空港・機内での接客以外は、ほぼ全てにおいてデジタルでの顧客接点がある。それは例えば、顧客が自身で撮影した写真をSNSにアップするなど、我々のプロモーションではないことも含まれる。実際に、それらがプロモーションにつながることもある」と述べた。笹間氏は「デジタルはマーケティングツールのひとつ。それより、24時間の中で、どれだけ我々のための時間を持ってもらえるかが課題。デジタルツールの活用で、よりリアルタイムな対応をしていきたい」と展望を語った。
続くビッグデータの活用やその成果については、三者ともその重要性について触れた後、「化粧品業界も、購買率の変化を捉えながら最適なタイミングで商品を提示するといった工夫が必要。今はトライアルを重ねている状況」(笹間氏)、「特に顧客ターゲティングの検証においてビッグデータを活用している。また常に売上の数字とマーケティング活動における数字をつなげて見ることでデータにリアリティが出てくる」(平林氏)と話した。
人材育成や社内風土構築については各社とも課題があると前置きした後、顧客視点で物事を考えられるかどうかが重要だと指摘した。「高いホスピタリティを維持するためにも『お客さまはどう思うのか』という“立ち返る場所”があることが大切。全てを社内で行うのは難しいが、PDCAでいうところのプランとチェックは企業側が主導する。そのうえでパートナー企業と連携して行うと良い」(西村氏)、「いままでの業務にデジタルによって新しい付加価値が提供できるかの見極めが大切で、それについての教育は社内で行っている。」(平林氏)と述べた。
最後に江端氏が、社内で専門の人だけが長く携わってしまうと、体制が変わったり人がいなくなったりした時の対応が難しい、と指摘。「そのためにも、デジタルマーケティングについては外部企業とパートナーシップを組み、企業の戦略をお互い共有しながらPDCAを回せる体制をつくれると良い」と語った。
「顧客の心をとらえるデジタルマーケティング」をテーマに行われたパネルディスカッション。登壇者は右からキヤノンマーケティングジャパン 平林泰直氏、資生堂ジャパン笹間靖彦氏、全日本空輸 西村 健氏。モデレーターはIMJの江端浩人氏(左端)が務めた。
パートナーシップ強化の意義と目指す未来像
データドリブンセッション1では「デジタルという文脈における“マーケティング”の役割」として、アドビシステムズの上原正太郎氏が登壇。自社のデジタル成熟度を捉えたロードマップを策定し、全体最適を図るマーケティング業務の必要性を語った。もう一つのセッションでは、リクルートジョブズの板澤一樹氏が、「DMPのCRM活用によるデータドリブンマーケティング」について語った。
また、カスタマーエクスペリエンスセッション1では「Salesforce Marketing Cloudによるキャンペーンマネジメント最新事例」として、セールスフォース・ドットコムの笹 俊文氏、オットージャパンの長島正城氏が登壇し、同社の取り組みとこれまでの成果を紹介した。もう一つのセッションでは、AKQAのダン・イナモト氏が「デジタル時代のクリエイティビティ」として、人が創り上げるクリエイティブの重要性について指摘した。
IMJは今回のI・CONの中で、「自社の持つ知見によって、デジタル化につまずく企業の課題を解決する」という立ち位置を明確にした。そのために、アドビ システムズ、セールスフォース・ドットコム両社とのパートナーシップを強化。それぞれの強みを活かして、企業の経営課題に即したデジタルシフトを一層推進していく考えだ。
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