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デジタル広報再入門 実践編

中川淳一郎さんがジャッジ、愛される企業・叩かれる企業のネット通信簿

中川淳一郎

ネット上で愛される企業、叩かれがちな企業は何が違う?「きっかけは、たったひとつの発言や施策だったりもする。なぜならそのイメージは案外強固で覆しにくいから」と、中川淳一郎氏。長年ネットニュースを編集してきた中川氏が解説する。

企業/ブランドの別は、ネット民により浸透している名称を想定して記載。例外として店名と社名がまったく異なるすき家(ゼンショー)は併記とした。

筆者作成

“誰が言うか”が重要

今年6月、ベネッセホールディングスの代表取締役会長兼社長に、日本マクドナルド会長の原田泳幸氏が就任した。このニュースを見たときに、私は「こ、これは……火の中の栗を……」と思い、ベネッセのその後のネットにおける評判が少し心配になった。

というのも、原田氏は「なぜかネットで叩かれる経営者」の代表格だからだ。この「なぜか」というものは、たったひとつでもネット民が持つ嫌悪感というか、「ネガティブ意識」のスイッチを押してしまった場合に、延々に残るもの。そのイメージは何をやっても挽回不可能。以後、叩きの対象としてロックオンされ、ネガティブな言動だけが抽出され、まとめられ、晒され続けるのだ。情報漏えい事件は、ネット民が原田氏の失敗を手ぐすね引いて待っていた矢先の失態だったのである。

原田氏は2004年に日本マクドナルドのトップに就任以降、「100円マックがお得と評判」や「プレミアムローストコーヒーが100円とは思えぬ味」など高評価で業績も上向いたが、ネットで同社が何かと叩かれるようになるきっかけとなった騒動がある。

2008年12月の「クォーターパウンダー 行列サクラ騒動」*1だ。この件は“ステマ(ステルスマーケティング)”の走りとして扱われ、今でもステマ騒動があると語り継がれるようになる。ネット民はステマのような「騙し討ち」を許さないもの。例えば2012年のペニーオークションのステマ騒動に関与したピースの綾部祐二は、今でも「ペニー綾部」と呼ばれることがある。

*1 クォーターパウンダーの発売を待つ人の行列がニュースになったが、後にそれが話題づくりのために募集されたアルバイトによるサクラであったことが発覚した。

さらに、その後原田氏が主導した「レジメニュー撤廃」「60秒以内に商品を渡さなかったらハンバーガー無料券進呈」といった取り組みが散々な評判になった。客がネットに「サービスが雑になった」と苦情を書くほか、バイトから「いい加減にしてくれ!」と悲鳴が殺到し、挙句の果てには客がバイトを気遣う事態に。そして批判の矛先は「バカな判断したな!」とすべて原田氏に向かうようになる。

マクドナルドの業績悪化もあり、過去の原田氏の優れた手腕や実績はなかったことにされ、ネットにはこの3つの汚点ばかりが流布し「クラッシャー原田」の異名も誕生した。そして今やネットでマクドナルドは「何をしても叩かれる企業」扱いだ。7月に発覚した中国の使用期限切れ鶏肉騒動で、サラ・カサノバ社長が見せた、お辞儀もしない被害者然とした姿勢も叩かれた。一方、同じファストフードチェーンでも、モスバーガーは店頭のほっこりする手書き看板や食材の質の良さもあり、「何をしても愛される企業」扱いだ。

そして今回のベネッセの会員情報漏えいだが、ネットのベネッセ叩きは苛烈なものだった。記者会見時の原田氏の振るまいに対し「謝ってねぇ」「被害者ぶりやがって」「エラソーだ」などと散々な扱いだったが、今回も「何を言うかよりも、誰が言うかが重要」というネットの法則が発動された。

ネット上の企業イメージは一般ユーザーからの「愛され力」だけでなく「メディア注目力」、これらを読んだ上での情報発信側(企業)の「ネット民の心の理解力」による情報発信・企画が紡ぎだす。それらをまとめた表が、図1だ。日々ネット上のコミュニケーションを見る私の感覚をもとに作成した。

イメージ通りの記事が受ける

前項の原田氏についてもそうなのだが、人間はひとつの主体に対し ...

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