1984年に出版され、日本における電通の存在意義を鋭く切り取ってみせた著書『電通』(朝日新聞出版刊)。当時、ジャーナリストの田原総一朗氏が書いた同書に刺激を受け、電通に入社したという社員もいたという。そんな田原氏は自らが長年主戦場にしてきたテレビ業界の趨勢と、目まぐるしい変化に翻弄される広告業界を今どのように見ているのか。4月に90歳となる今も、現役で活躍する同氏に話を聞いた。
広告業界もメディアも疑いの目で見られている
─現在、田原さんの目に広告産業および広告業界は、どのように映っていますか。
広告業界の全盛期は1980年代に始まったわけですが、実はその頃、新聞もテレビも全盛期だったんですね。ところが、今ではどちらも苦境に陥ってしまっている。例えば、朝日新聞のかつての発行部数は800万部を超えていたのに、わずか40年で半分以下にまで減ってしまった。テレビ業界も、すべての民放テレビ局が不況にあえいでいます。なぜかといえば、テレビが力を失って、その結果としてスポンサーがつかなくなってしまったからだと思います。それなら今、どこに多くのスポンサーがついているのかといえば、それがネットメディアなわけでしょう。
そもそも、テレビ局は総務省から免許が交付されて運営しているものですから、真正面から政府とは対立できません...
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