オンラインの顧客行動が可視化され、顧客の意識や行動を把握するデータとして利活用が進むなか、オフラインの顧客の行動も把握し、より一層の顧客理解に生かしたいと考える企業は増えています。そこで注目されるのがスマホの浸透により取得が可能になった「人流データ」です。本稿では、ジオテクノロジーズの秋本和紀氏がマーケティングにおける人流データ活用のトレンドと2024年以降のアップデートポイントを解説します。
都市計画にマーケティング施策 多岐に活用される人流データとは
人流データとは、人々の移動や滞在といった位置情報を集積したビッグデータのことです。このデータはGPS、Beacon、Wi-Fi、AIカメラなどを通じて収集され、行政の都市計画から民間のマーケティングまで多岐にわたる分野で活用されています。
●GPS:スマートフォンなどのGPSを利用して収集される位置情報で、屋外の人の移動履歴を把握することができます。
●Beacon/Wi-Fi:商業施設や地下街などGPSの届かない屋内で収集される位置情報で、フロア内や階層別の人の移動を把握することができます。
●AIカメラ:屋外や商業施設に設置されたAIカメラを用いて、顔認識や人数カウントにより人の流出入数を把握することができます。
前述のうちGPSによる人流データを収集している代表的な企業としては、例えばNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの通信会社や、Google、Appleなどのプラットフォーマーになります。そして、当社のようなスマートフォン向けのアプリやSDKを通じて人流データを収集している民間企業も存在します。
人流データ活用のトレンドとマーケティング活用の最新事例
世界的にも人流データの活用は進んでおり、例えばスマートシティの分野では人の移動パターンの分析を通じて、公共交通やシェアモビリティの最適化などの基礎データとして活用されています。また近年では新型コロナウイルス感染拡大の中で、人々の密集度をリアルタイムにモニタリングするなど、感染症対策でも人流データは注目されました。さて、ここからはマーケティング分野における人流データの活用事例として、4つほどご紹介します。
a.商圏の最適化
小売業や飲食業では、以前から国勢調査などの静的な人口データなどを活用して商圏分析が行われていましたが、近年は動的な人流データも加えることで、より精緻な商圏分析が可能となり、新規出店計画や既存店の統廃合などに活用されています。また、自店舗だけでなく周辺の競合店の来店者数や併用率などもモニタリングすることが可能で、日々の店舗運営にも活用されています(図)。

図 人流データを活用した商圏レポートのイメージ
b.棚割りの最適化
メーカーや…