一見、二酸化炭素が排出されることを認識しにくいデジタル広告ですが、Web上の情報やコンテンツを探索するネットブラウジングは現在、地球上の総炭素排出量の4%を占めています。本稿ではIPG Mediabrandsの忍久保恵太氏がデジタル広告の及ぼす環境への影響を加味し、広告業界全体でサステナビリティやカーボンニュートラルを目指す必要性について解説します。
デジタル広告はカーボンニュートラルなのか?
サステナビリティとは主に環境保護・環境維持を示します。また、この一環としてカーボンニュートラル(排出される二酸化炭素を吸収・除去し、排出量をプラスマイナスでゼロにしようという考え)も、その柱のひとつとなります。それでは、このサステナビリティの取り組みに際して広告、特にデジタル広告が関わることはあるのでしょうか。
例えば、新聞や雑誌などの紙メディアに対する広告出稿は、二酸化炭素排出量への関与が想像しやすいと思います。それでは、デジタル広告はカーボンニュートラルな活動なのでしょうか。
実は現在、インターネットは地球上の総炭素排出量の4%を占めており、航空業界以上の二酸化炭素排出量です。そしてデジタル広告はインターネットの総炭素排出量の一部の原因となっています。
デジタル広告はどのように二酸化炭素排出を引き起こすのか?
インターネット上の二酸化炭素排出量がどこから発生するかを理解するためには、まず、排出がスコープで分類されていることを知る必要があります。スコープは3つに分かれています。スコープ1および2の排出は、組織の事業活動によって引き起こされ、その中でもスコープ2は、企業の建物、施設、車両に電力を供給するために必要な電力網からのエネルギー消費と移動によって発生します。スコープ3排出量は、企業のサプライチェーンによって生成され、デジタル広告業界の組織の総炭素排出量の90%以上を占めています。
デジタル広告におけるスコープ3の炭素排出量をよりよく理解するために、デジタル広告のサプライチェーンで説明します。図のように広告主、広告代理店、出版社に至るまでの間にサーバーや制作に関わるエネルギー放出による二酸化炭素排出が行われています。
標準的にデジタル広告がどのくらいの二酸化炭素を排出しているかを概観してみましょう。まず、100万回の広告インプレッションを配信するために必要なエネルギーは、排出される約1トンのCO2に相当します。これを分かりやすく立て直すと次のような例が挙げられます。
●米国マサチューセッツ州ボストンから英国ロンドンへの往復1回
●121,000台のスマートフォンをフル充電
●約250万本のプラスチックストロー製作 など