広告マーケティングの専門メディア

           

「ネット広告」の課題と企業倫理

広告業界が取り組むべき、不当表示と不適切表現への対策とは?

柳澤伸司氏(日本インタラクティブ広告協会)

消費者とインターネット広告の接点が増加する一方、法的、そして商倫理的に問題のある広告によって、インターネット広告自体がネガティブなイメージを持たれてしまうことも少なくありません。ではインターネット広告の体験品質向上に向けて、広告主や媒体社、広告会社などはどのような役割を果たすべきなのでしょうか。日本インタラクティブ広告協会の柳澤伸司氏が解説します。

いかがわしい、誤解を招く⋯ 拡大するネガティブイメージ

日本インタラクティブ広告協会(以下、JIAA)では、インターネット広告の信頼・品質・価値の向上に向けたJIAAの活動の根拠とするべく、「インターネット広告に関するユーザー意識調査」を2019年より実施。ユーザーがインターネット広告に対しどのように考えているかを多角的に把握するよう努めています。

図表1を見てもらうとわかるように、各マスメディアの広告と比較しても、インターネット広告の信頼性が低下しているのは明らかです。また、インターネット広告に対するイメージとしては、「しつこい/不快」と「邪魔な/煩わしい/うっとうしい」がいずれも高く、ユーザーにネガティブなイメージを持たれてしまっています。過去の調査から経年で比較すると、インターネット広告は、「いかがわしい/怪しい」「誤解を招く/虚偽感のある」イメージが増加しています。

図表1 「広告」を「信頼できる」
※スコアは「信頼している計(TOP4)」(「【1】とても信頼している」+「【2】」「【3】」「【4】」)のスコアを掲載
※2021年n;インターネット利用者計:5045、テレビ利用者:4151、ラジオ利用者:1866、新聞利用者:2259、雑誌利用者:1656
※2019年n;インターネット利用者計:5000、テレビ利用者:4096、ラジオ利用者:1778、新聞利用者:2377、雑誌利用者:1642

出典:JIAA「2021年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定量)」

こうした状況の原因のひとつとして考えられるのは、違法性が疑われるような不当表示や倫理的に問題のある不適切な表現の広告がネット上に横行する状況が続いているから、と言わざるを得ません。この状態を放置しておくと、不当・不適切な広告の主体である広告主はもちろん、掲載したメディアの価値も低下してしまうことになり、インターネット広告全体の信頼性をも損なうことになります。

成果主義が中心となり本来の広告効果・価値が後回し

インターネット広告は、デジタル技術の変革に応じて、さまざまな創意工夫とともに発展してきました。ですが、広告の配信状況を容易に数値化し測定できることにより、広告のクリック率など分かりやすい成果を中心に評価されてきましたし、取引の効率化に重点を置かれて発達してきたわけです。

その結果、現在の...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

「ネット広告」の課題と企業倫理 の記事一覧

「使ってもらえる広告」から13年 広告業は「プランナー・イノベーション」の時代へ
世界を少しでもハッピーな場所にするためにインターネットを「自然」の一部と考えてみる
広告活動に求められる、企業倫理
日本特有の問題表現や薬機法違反 ポリシーに反する広告への対策がますます重要に
高まる企業とクリエイターとの協業の重要性 ステマ対策を徹底し、利用者に対する透明性を担保すべし
広告主審査、広告原稿審査を徹底し「なりすまし広告」撲滅の取り組みが必要
アフィリエイター制作の広告に課題も 業界団体などと連携した取り組みが必要とされる
マーケティング活動を脅かす、世界の最新・不正行為
広告主がいま、すべき対応とは?
「消費者の権利」から、適切な広告の形を考える
広告業界が取り組むべき、不当表示と不適切表現への対策とは?(この記事です)
現代社会における「不適切な広告」とは?
消費者庁に聞く、消費者保護とデジタル広告の監視強化方針
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する