「編集」とは
☑コンテンツ(点)を集め、編むという行動。
☑工程を体験し、新たな視点を発見すること。
☑センスや才能は必要ない。日常。
「編集」という言葉が出てこない「編集」の話
絵を描くのが好きでたまに褒められたことがあるくらいのレベルでしたが、将来はものをつくる仕事がしたいと思っていました。私が高校生の頃はまだバブル景気で、銀行のようなバー、川が流れるレストランなど面白いお店がたくさんできていました。
それらに携わる仕事に興味を持ち、雑誌で見つけたその職業は空間プロデューサー。改めて聞くと、いかがわしいですね。私は空間プロデューサーになるため、美術系大学の説明会に行き、空間プロデューサーになれるかを質問すると、まさかの「そのような職種は聞いたことがない」と言われました。諦めずにどのようなことがやりたいのかを説明すると、それはインテリアデザイナーであることがわかりました。
そこから美大を目指して勉強を始めましたが、残念ながら落ちてしまいました。その後、ものづくりができそうな会社を探していたとき、空間プロデューサー職を偶然発見して、幸運にも入社することができました。
若い20代の社長と私以外は3人しかいない自由が丘にある小さな会社でした。自由が丘界隈のレストランのデザインをいくつか手掛けていて、私は工事現場の管理や設計のアシスタント、お店のネーミングやロゴのデザイン、ユニフォームを決める仕事をしていました。美大卒でもないし、知識も技術もないのに良くできていたなと思いますが、多分できていなかったのだと思います。会社もそんな私によく任せてくれていたなとも思います。
さらに入社して半年くらい経った頃に社長から、ひとつの空間をすべて任されました。私は、美大に入った友人に声をかけ、一緒にアイデアを考えることにしました。コンセプトは2つの顔を持つバー。2つの顔とはアートとバー【図1】。多くの美大生が作品を発表する空間を必要としていたことと、お酒を飲みながらアートを鑑賞できれば面白いかもしれない。
センスや才能は必要ない 実はすべてが「編集」だった
ここまで今回のテーマである編集について出てきていませんが、実はこれらはすべて編集だったのです。
私が興味を持った空間プロデューサーは、銀行×バーや川×レストランを編集していました。私が友人と編集したバーはアート×バー。つまり編集とはコンテンツという点を集めてありとあらゆるかたちに「編む」ことだと私は考えています。編集という意識がないまま興味を持ち、編集的思考になっていました。
皆さんの生活もそう考えてみると同様のことが言えると思います。出かける際の洋服をどのように決めていますか?誰に会うのか、どこに行くのかなどTPOに合わせますし、気温や気候なども当然、考慮します。
例えば初対面の人と会う場合、清潔感があり明るく社交的な印象にしたいのでシンプルな白シャツを選んだとします。これを、編集的に解釈してみると、「初対面の方×清潔感があり明るく社交的×洋服」のように、いくつかのコンテンツの掛け合わせになっていることがわかります。
このように、日常はあらゆるコンテンツの掛け合わせでできています。だから、編集スキルを改めて身に付ける必要もないですし、センスや才能も必要ありません。コンテンツの発見と編集的思考を実践すれば、仕事や生活に活用することができます。
『ポパイ』のデザイン会議に学ぶ 視点を発見する過程
では、編集を仕事としている編集者がどのように雑誌をつくっているのかを私の実体験をもとにお話します。
私は空間づくりの仕事の中でロゴやメニューの制作の方が...