近年BtoBtoCの業態の企業であっても、顧客とダイレクトにつながるコミュニケーションチャネルを持てるようになった。さらに店頭サイネージなど販促ツールのデジタル化が進んでいる。「マーケティング」の領域が広がるなか、プロジェクトを立ち上げデジタルマーケティングに注力しているキッコーマン。現在の状況と展望を聞いた。
DXに関わる部署と主な役割
キッコーマン 経営企画室/CRM機能の構築・データ基盤整備等
キッコーマン食品 プロダクトマネジャー室 デジタルマーケティンググループ/広告出稿・SNS運用・データ分析・実証実験等
テレビCMとメニュー提案を軸に グループで一貫した施策を実施
キッコーマンでは2018年、経営企画室主導のプロジェクトとして「デジタルマーケティングプロジェクト」が発足した。2019年に経営企画室内に組織化され、様々な探索的な取り組みを経て事業会社で活用できる知見を蓄積し、仕組みを構築してきたという。その後、経営企画室のデジタルマーケティング担当から分離する形で、2021年にキッコーマン食品プロダクト・マネジャー室内にデジタルマーケティンググループを新設し、実行機能そのものを移管。消費者の接点となる流通・マーケティング・宣伝広告に関わる領域を担う。
情報発信の軸となるのは、テレビCMとメニュー提案だ。マーケティング施策と、同社のレシピサイト『ホームクッキング』やレシピアプリ『きょうの献立』、各種SNSでの発信は綿密に連動。販売促進、メニュー開発、広告、マーケティングの各部門だけでなく、豆乳飲料のキッコーマンソイフーズ、ケチャップのデルモンテなど、各グループ会社との連携も円滑に行われているという。
宣伝担当マネジャーの澤村厚之氏は「以前は、食品事業会社の宣伝グループでテレビCM、新聞・雑誌からデジタルまで戦略を立案していましたが、2018年以降は経営企画室のデジタルマーケティンググループと、21年以降は食品事業会社のデジタルマーケティンググループと連携してデジタル施策を立案。新しい取組みは今でも、経営企画室と連携しています」と話す。
「大切なのは、テレビCMから店頭まで、一貫した世界観とコピーで展開すること。新たな組織となって1年半ほど経ちましたが、その連携がようやく形になってきました」(澤村氏)。
施策が細分化したとしても見るべきは「売上」
同社のデジタルマーケティング推進の成果のひとつに、施策の効果検証が挙げられる。
テレビCMの効果検証として、CM出稿時の売上、店頭における商品のエンド露出等の変化、世代別のリーチ人数、商品認知、購入意向の変化を定期的に分析している。プロジェクトの発足時から携わり、現在デジタルマーケティンググループのマネージャーを務めるのが、岡浩一郎氏。
「『しぼりたて生しょうゆ』であればインテージ社のSPI(全国店頭プロモーション調査)で山積み率やチラシ掲載などの販促データをモニタリングします。一方で全くの新商品であれば商品認知など...