雑誌や新聞など、物理的に手元に残るメディアのデジタル化は、提供側、そして受け取る側の環境や価値観により、大きな変革が起こりづらい状況にある一方、これまでにない価値を提供する可能性を持っている。出版ビジネスの在り方や生活者に提供しうる価値について、今泉睦氏が解説する。
出版業界の「DX」はグーテンベルク印刷以来の大変革
世界の三大発明に、15世紀中頃につくられたグーテンベルクの活版印刷がある。世界で最も多く印刷された書籍は「聖書」と言われているが、情報やノウハウが「書籍」になる事で世界は一気に変化していった。日本での最初の雑誌創刊は1867年の『西洋雑誌』と言われており、タイトルの通り海外の生活情報が紹介された。翌年の明治の幕開けと共に「文明開化」につながる出版文化が始まった。出版のDX化は1990年代に「CD-ROM」の付録活用や出版社のWebサイト立ち上げから始まる。そこから30年、現状は大きく変わった。
紙に印刷をする出版事業は、今後においても事業の基点として重要な役割を果たす。流通ネットワークで計画的に店頭に置かれ、生活者が手に取り売れ行きとして評価される。定期的な発行を行うことは、「社会を見つめ、作家を見出す編集者」を育て、「コンテンツを編纂していく手法」をつくり出し、「出版社や雑誌のブランドを構築」していく。
現在、雑誌や出版のDX化は世界中の...