BtoC企業と比較しBtoB企業の商品やサービスは、一般の生活者に認知されにくいという課題を抱えているケースが多い。ノバセルが運用するサービス「ノバセルトレンド」では、「指名検索」という指標でCM効果を可視化。タレントの起用が「指名検索」にいかに関係するのか。同社SaaS事業部の柿谷隆太氏が解説する。
BtoC企業とBtoB企業 異なるコンバージョンのプロセス
タレント起用のテレビCMというと、BtoC企業のものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし最近では、BtoB企業もCM出稿に積極的になってきており、BtoC企業と同じく商品やサービスの特徴とブランド名をタレントに語らせるCMが増えてきています。
とはいえ、BtoBの場合、BtoCと異なり、CMを見た瞬間に商品購入やサービスが導入されることは多くありません。BtoB企業の商品・サービスは情報収集や詳細のヒアリング、交渉などを行った上で社内に提案し承認が下りて、やっと購入や導入ができるという、いわゆるコンバージョン地点が遠いからです。
コンバージョン地点の遠いBtoBサービスがCM出稿する上で、コンバージョンにつながる指標として近年注視されてきているのが「指名検索」です。「指名検索」とは、Web検索される広告対象となるブランド名を示します。CM視聴中の指名検索数の変動により視聴者の動きを効果として見る方法が広まってきているのです。
そこで本稿ではBtoB企業のCMにおいてタレント起用が「指名検索」にどれくらい影響を与えるのか、CM出稿の多いBtoB企業のCMを中心に関係性を紐解いていきたいと思います。
2022年3月1日~6月30日の期間でCM出稿量の多い主要なBtoB企業16社を調査したところ、うち13社は有名タレントを起用していたことが分かりました【図表1】。有名タレントを全く起用していなかった企業はServiceNowとLINE(LINE WORKS)、DMM.com(DMMチャットブースト)の3社で、有名タレント起用とそうでないCMの両方のクリエイティブで出稿している企業はサイボウズ(キントーン)の1社でした。ここでは、有名タレントの定義を「Googleトレンドにて過去12カ月の期間でそのタレント名のデータが見られる人」としています。
なぜ、BtoB企業が有名タレントを起用するのか?
BtoBの商品・サービスを選定する際にユーザーは、ある程度実績や信頼感を重視します。そのため、BtoB企業は信頼感が伴う認知を獲得したい意向があります。その点、テレビCMは出稿する際の考査も厳しく、放映できているだけで、ある程度の信頼感の獲得につながります。そこに有名タレントの起用を掛け合わせることによって、さらに信頼度の高い認知を獲得するべくCM出稿している可能性があります。
また、CM出稿しているBtoB企業の中には、レガシー企業やすでに認知のある商品・サービスではなく、スタートアップ企業などが認知を得ることを目的とした出稿も多く見られます。その場合、まずはCMを見て企業や商品名自体を知ってもらうことを優先するため、有名タレントを起用して注視率の高いCMクリエイティブにするという思惑もあると考えられます。
認知が上がることで、その他のマーケティング施策の集客力向上や、営業効率向上、展示会などのイベントでのアテンションにも寄与するため、購入や...