サイカは脳波解析とデータサイエンスの技術を用いてテレビCMのクリエイティブの効果分析から制作まで行う「ADVA CREATOR」を提供している。それではCMに登場するタレントは、人々の脳波にどのような影響を与えるのか。「ADVA CREATOR」のデータをもとに、ソリューション統括部 統括部長の古川琢也氏が考えを述べる。

サイカ
事業本部 ソリューション統括部
統括部長(Co-Head)
古川琢也氏
慶應義塾大学卒。電通グループ、独立起業等を経て2021年サイカに参画。データサイエンスと統合マーケティングコミュニケーションを融合したADVA事業を率いる。
日本における「タレントCM」の存在感
海外と日本のテレビCMを比較した際の大きな違いのひとつに「タレント起用の有無」があります。そのことはいくつかの調査からも明らかになっており、米国の市場調査会社・カンターの調べでは、有名人を起用したCMの割合は欧米では10%程度である一方、日本では55%と顕著に高いことがわかっています※1。この説の真偽はさておき、日本の広告界では一般的に「人気のある有名人を起用したCMは一定の効果が期待できる」と考えられていることの証左と言えそうです。
※1 https://www.kantar.com/inspiration/advertising-media/how-can-celebrities-help-to-maximise-the-brand-impact-of-advertising
事実として、CM総合研究所が2021年12月に発表した「2021年度銘柄別CM好感度トップ10」を見ると、1位のKDDI「au」から10位のAGC「ブランディングCM」まで、ランクインしたのはいずれも人気のタレントや俳優が起用されたものばかりでした【図表1】。
出所:BRAND OF THE YEAR 2021(CM総合研究所)
2021年度のCM展開(東京キー局):2454社/6737銘柄/1万4742作品、集計期間:2020年10月20日~2021年
10月19日、関東1都6県在住の一般モニター男女3000人の「月例CM好感度調査」の12カ月分より集計
さて、これらのCMの好感度が高いのは「タレントを起用しているから」なのでしょうか?タレントを起用したCMには「商品・サービスや企業の認知度を高める」「消費者の購買意欲を高める」といった効果がどれだけあるのでしょうか?
ずばり、サイカの調査・分析からわかった結論をお伝えすると、答えは「NO」です。もう少し正確に言うと、「タレントを起用すること“自体”は、消費者の購買意欲の向上に寄与しない」ということがわかりました。察しの良い読者の皆さんの中には、「そのような言い方をするのは、やり方次第では効果が見込めるということでは?」と思われた方も多いのではないでしょうか。ご明察です。本稿では、タレントを起用したCMに期待できる効果を解説するとともに、その効果を...