ここまでCCCマーケティングが提供するシングルソースデータがもたらすマーケティング活動の可能性について橋本氏、長島氏の両名に話を聞いてきた。最後に、BI分析ツール「Market Watch」が擁する3つの具体的なサービスと、2021年7月にスタートしたCM枠販売について解説する。
全国約7000万人超のデータでマーケティング活動全体を支援
Tカードを年に1回以上使用するユニークユーザー(UU)数は約7000万人で、そのうち1カ月に1度以上使用している会員が約4000万人超。また、最大で約4000万人がデジタル広告と連携可能である。さらにいま、コネクテッドTVにT会員番号を登録し、マーケティング履歴の活用に許諾したユーザー、すなわちテレビ視聴データと連動できるユーザーパネルは約46万人を突破した。
同社ではこのT会員のデータを基盤に、企業の課題発見、店頭プロモーション・サンプリングといった体験の提供、会員向けメディアを活用した行動の喚起、これらの実施から購買検証までを一気通貫で振り返る効果測定と、マーケティング活動全般をワンストップで支援できる体制を整えている。
なかでも最近、注目されているのが、大規模シングルソースデータでターゲット分析から施策の企画・実施、効果検証まで支援する「Market Watch Target Profiler」「Market Watch Target Heatmap」「Market Watch Target CM購買分析」などを内包したBIソリューションである「Market Watch(以下MKW)」だ。従来からID-POS分析、TVデータソリューションなどを提供してきたが、生活者データをよりわかりやすく、マーケティングの実務に活かしやすい形でパッケージ化した「MKW」の導入企業が増えているという。
3つのサービスとバイイング支援で効果の高いCM出稿を実現
現在、シリーズとして展開している「MKW Target Profiler」「MKW Target Heatmap」「MKW CM接触購買分析」の3つに加え、近年放送局でも導入が始まっている「SAS(スマートアドセールス)」に対応し、ターゲットに最適な枠の分析を基に実際のバイイングを行うソリューションも提供。1本単位で枠を指定して購入できるフレキシブルなテレビCM出稿に、同社保有のデータが生きてくる。
データ分析の起点のひとつが、“人の情報”を多面的に可視化する『MKW Target Profiler』だ【図表1】。ここでは性年代や家族構成、興味関心といった『デモグラフィック』、居住地や出現地の『エリア』、数万人の調査データを基に衣食住やエンタメにまつわる志向性をスコア化した『顧客DNA』をもとにペルソナを組み立てる。購買セグメントでは、カテゴリ別・ブランド別の購買率と購買リフト値、興味関心が反映されやすい『雑誌』の購買率と購買リフト値を選択できる。
例えば、東京駅周辺のTカード利用者を「東京駅利用者」と絞り込む。各指標の情報を深掘りしていくと、例えば「野菜ジュース」や「ビネガードリンク」といったカテゴリで、関東全体と比較してより購買率が高い、という結果が出たそうだ。
CCCマーケティングの担当者と広告主、テレビ局の担当者が一緒にデータを見ながら共有していくなかで意識するのは、比較すること。エリアやブランドで設定を変えながら、自社のターゲットや枠、番組の特徴や課題、コミュニケーションメッセージ等をあぶり出していく。
そして、実際にCMプランニングを行うツールが『MKW Target Heatmap』だ。活用するのは、Tカードに紐づく約46万人の視聴データ。全国32エリアの地上波、独立放送局(TOKYO MXやテレビ埼玉など全国13局)、BS、CSの録画視聴も含め、1秒単位で取得。ここにターゲットセグメンテーションを掛け合わせ、各局30分刻みで効果的な枠を可視化する【図表2】。
開発の起点は、テレビ局が持つそれぞれの“枠や番組の価値”を高めることにあった。
「しょうゆメーカーに対してであれば、しょうゆカテゴリの購買者の含有率が、同時間帯の番組のなかでもっとも高ければ、セールスポイントになります。購買データとつなぐことで、その枠の視聴者が持つ購買ポテンシャルを広告主に対してわかりやすく可視化して説明することが可能になるのです。すでにキー局、ローカル局も含め、広告主の商材やカテゴリの購買者が多く含まれる枠を提案するという活用も進んでいます」(長島氏)。
ターゲットセグメンテーションは、まず性年代や世帯構成、職業、ライフスタイルといった「デモグラ・属性系データ」がひとつ。直近1年間の食品・日用品の購買者データでは、中分類からメーカー・ブランド単位でも検索・選択できる。さらに2022年1月には、TSUTAYAでの書籍・雑誌・映像・音楽・雑貨等の購買データに基づいた「興味関心層」の分類が追加され、分析可能なセグメントは全国計で約5000を超える。
ここに『MKW Target Profiler』で見えたターゲットの特徴を当てはめる。過去の購買者がよく見る枠を把握し、購買インパクトの高い枠に出稿するのか。あるいは、過去購買者のなかでもボリュームの大きいライト層に当てたいのか。また、例えば台所用洗剤であれば、過去購買の有無にかかわらず、料理関連の書籍を買っている「料理興味関心層」をターゲットにすることもできる。
実際にプランニングを行って出稿したCMの効果検証は、『MKWCM接触購買分析』を用いる。
例えば性年代を設定し、対象のCMがどのように接触していたのか、接触した人としていない人での購買率の差はどうだったのかを時系列で可視化【図表3】。これにより、「過去はF2を中心にCMプランニングをしていたが、新たなセグメントに当てたら効果が高かった」といったことも判明するという。
さらに購買に影響するフリークエンシーを確認したり、CCCが計測するGRP投下量と性年代別購買率をかけあわせ、どの層にどのタイミングで効いたかを確認することもできる。
ターゲット起点でCMを出稿 デジタル広告的な活用も広がる
「購買」が起点だが、実はメーカーだけではなく、リクルート目的の企業広告での活用も広がっている。
例えば『就職活動中の年齢で、かつ学生と答えた人とその保護者』というセグメントをつくって、その人たちがよく見ている番組を特定してスポットCMを打つ、ということも可能。またあるインフラサービスリサーチでは、契約者の節約志向が高いことが分かった。そこで『食の低価格志向がある人』や『ポイントをよく使う人』というセグメントを『節約層』としてCMプランニングした事例もあるという。
すでにテレビ広告を活用している企業だけではなく、初めてテレビCMを出稿する企業のサポートも増えてきた。この傾向について長島氏は、「限られた予算の中でリーチやコスト効率を最大化できるのはどういった枠や番組の組み合わせなのか。これをターゲット起点で分析することが可能です。ピンポイントにビジネスパーソンだけに当てたい、というような、デジタル広告的な活用もされています。また、デジタル広告と同じターゲットでテレビCMを活用できるとご評価いただいています」と話す。
誰でもデータを扱えるようになり“マーケティングの民主化”が進む
これまでマーケティングを学んでこなかった人が、ツールを使いこなすことで、顧客を理解したり、仮説を設定したりといったスキルを磨いていけるのが今の時代。利用者の声を踏まえ、リリース当初と比較して“わかりやすさ”を追求したUI/UXへと改修を進めているのだという。相談を受けるのはマーケティング部門だけではなく、宣伝広告の担当者やブランドマネージャーなど幅広い。誰でもマーケティングを実践できるようになる“マーケティングの民主化”を推し進めるソリューションでもある。
「自動化、機械化が進んでいっても、それらの連関を導き出して新たな仮説を立てるのが、ツールだけではできない領域です。初めは私たちから具体的なセグメントを提案するのですが、繰り返していくうちに皆さんもやり方を覚えて、仮説を立てることが楽しくなってくるんです」と長島氏。
利用者のリアルな生活を把握する。プロダクトの価値向上につなげる。潜在的な顧客を見出す。今後もさらに多様な企業と連携して事例を積み重ねながら、データ活用の可能性を広げていきたいと考えている。
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CCCマーケティング株式会社 新規事業Division テレビマーケティングUnit
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