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博報堂「AaaS」を支える統合データ基盤 広告主・メディア企業への提供価値とは

博報堂DYメディアパートナーズ

博報堂DYグループが2020年12月、広告メディアビジネスの次世代モデルとして提唱した「AaaS」構想。その実現の要となるのが、多種多様な指標・フォーマットが乱立していたメディアに関するデータの統合だ。レビやデジタルそれぞれの領域でも複数のデータが存在し、サイロ化された状況。これでは、テレビとデジタルの統合管理は事実上、不可能な状態だ。こうした課題を解決するのが「統合メディアDWH」。AaaS構想の肝となる「統合メディアDWH」、さらには「AaaS」が提供する、広告主にとっての価値は何か?そのプロジェクトの全容に迫る。

メディアデータの課題を解消 縦割りを省いた統合基盤

AaaSを構成する3つの要素のひとつ「システム基盤」を支えるのは統合メディアデータウェアハウス(DWH)だ。この統合メディアDWHは、テレビのデータ、デジタルのデータ、テレビとデジタルを横断したプランニングデータを統合し、同一環境で複数のデータを横断した集計や分析が可能になっており、データ活用の幅を広げるものとなっている。

これまで、テレビとデジタルのデータは指標が異なり、分断されていた。かつ各メディア単体で見ても、テレビのデータは購入広告枠データ、視聴率データ、視聴ログデータがそれぞれ別のシステムで管理されていた。そのため、分析に際しては各システムからデータを引き出し、個別に作業する必要があり、データのサイロ化が課題となっていた【図表1】。

図表1 これまでのデータ基盤の課題

デジタルに関してはメディアごとに実績データが管理され、またDSP事業者が独自にデータを持っているケースも多いため、キャンペーン単位で実績のレポートを作成する場合は担当者が必要なデータを集め、個別に紐づけを行い作成する作業が必要となっていた。媒体社を横断してデジタルデータを紐づけることに課題があったのだ。

「テレビのデータはサイロ化し、デジタルは媒体社ごとにデータが存在するような環境では、テレビとデジタルのデータを統合して管理・運用することは非常に時間と手間がかかり、事実上困難な状況にあった」と話すのは、博報堂DYメディアパートナーズメディアビジネス基盤開発局長の藤本良信氏だ。

また、テレビとデジタルを横断したプランニングは今までも行われており、そのためのデータを提供する事業者も存在する。しかし、プランニングまではできても、その先のバイイングへの反映や結果のモニタリングをするためには、データが分断されており、プランニングとバイイングに乖離があっても気づくことができないという課題があったのだという。

「統合メディアDWH」による AaaSを支えるシステム基盤とは?

従来のデータ環境のままでデータを紐づけようとすると、担当者個人の作業量は膨大、そもそも紐づけることができないケースも多い。データ活用の環境を進化させようとしてもできないのが現状だった。

そこでAaaSを支えるデータ基盤として構築されたのが統合メディアDWHだ。これにより「プランニング」「バイイング」「モニタリング」というメディアビジネスのプロセスを同一環境下で接続することが可能となった。

なぜ、これまでこのような基盤がつくれなかったのだろうか。その理由は各種データの保管環境にある。

「近年、広告メディアに関するデータの種類は増えてきていたとはいえ、そのデータはクラウドではなくサーバーに蓄積されているケースがほとんど。データを集約するためには、データの蓄積された場所からダウンロードし集計する必要があった。今回、グループとしての決断もあり、データをクラウドに置き換え、接続することで統合メディアDWHを構築し、横断して利用可能なシステム基盤をつくった」(藤本氏)。

広告主保有のデータとも結合 広告投資の精度を高める

さらに藤本氏は「統合メディアDWHでは、業界最速で細かいデータ粒度でモニタリングすることにこだわっている。モニタリングの後、プランニングのプロセスにおいては、テレビとデジタルを同じ指標で分析し、明確な指標に基づいたリプランニングを実現することが可能。さらにプランニングをバイイングに落とし込む際にもバイイングに直結した粒度でプランニングが可能になった。データとシステムの環境を構築することで効果を追求する実施力が格段に上がり、それを支えるスピード運用も可能になっている」と、その強みを解説する。

統合されるデータはテレビの各種データ、デジタルの媒体社ごとの実績データ、テレビとデジタルを横断した調査データに加えて、博報堂DYグループが独自に保有する生活者データやKPIやKGIにつながる3rdパーティーデータ等で構成される。これらが同じ環境で紐づけられ、AIを活用したオリジナルのアルゴリズムによるシミュレーションや、データを整形しさまざまな形で提供できるAPIの作成なども可能にしている。

クライアントが独自に持つ1stパーティーデータとつなぐことも可能なため、AaaSのデータに自社保有のデータを加えて広告効果を最大化するモニタリング、プランニング、バイイングも実現可能になっていく。

こうした環境を個別につくることは困難であるだけでなく、データガバナンスのゆらぎが発生する恐れもある。統合メディアDWHによりそれらの懸念を解消し、スピード感を高め、クオリティを担保することにもつながるのである。

目的に合わせ柔軟に導入可能な 4つのサービス群を提供

AaaSのソリューションは、システム基盤と統合メディアDWHをベースに、クライアントの課題に対して答えていくこと。藤本氏は「統合メディアDWHの基盤のもと、大きく4つのサービス群を提供していくこと」と話す。具体的には「Marketing」、「TV×Digital」、「TV」、「Digital」の各レイヤーが抱える課題に応じて4つのサービス群を用意している【図表2】

図表2 AaaS 4つのサービス群

事業目標・マーケティング戦略からのKPI設定と運用を正しいロジックを持って実行できないという課題を抱える「Marketingレイヤー」に向けては戦略とメディア施策の接合を提供する「Analytics AaaS」。

テレビとデジタルが別の指標で運用されていることが課題の「TV×Digitalレイヤー」には「Tele-DigiAaaS」で統合的な管理と効率的な運用を提供する。

プランニング・バイイング・モニタリングの分断に悩む「TVレイヤー」には「TV AaaS」でテレビの高速PDCA(次世代運用型広告)化の実現をサポート。

CPMやCPCなどデジタル上の指標でしか最適化できないという「Digitalレイヤー」の課題には「Digital AaaS」で独自システム基盤を活用した効果的・効率的なデジタル広告の運用を提供する。

いずれのサービスもそれぞれのレイヤーでモニタリング、バイイング、プランニングのサイクルを回すことを基本にしながら、各レイヤーの課題や目的に合わせて「for Reach&FQ」や「for Brand Lift」、「for Search&CV」などの細かいサービスメニューを組み合わせて運用していくことになる。

「TV AaaS」や「Digital AaaS」といったサービス単体から導入し、段階に応じてレイヤーを加える運用も、サービス内でプランニングやモニタリング、バイイングのパートを切り分けての運用にも対応している。博報堂DYメディアパートナーズAaaSビジネスプロデュース局長の飯塚隆博氏は「すでに導入している企業では、まずモニタリングから始めることが多い」と話す。

「TVレイヤー」、「Digitalレイヤー」のいずれでもモニタリングダッシュボードの運用から開始し、実績を重ねてプランニングやバイイングのパートの追加や、レイヤーを拡大して運用している。

AaaS活用における進化の段階としては、「TV AaaS」や「Digital AaaS」からスタートし、「Tele-Digi AaaS」で統合運用を実施。「Analytics AaaS」で、より高度な戦略とメディア施策を接合させ、事業成果を最大化していくイメージだ。ただ、どのサービス群から利用するかは広告主の課題と目的によって柔軟に対応することが可能だ。「Analytics AaaS」から開始し、マーケティング施策の全体像から各レイヤーへと落とし込むような運用も可能だ。

同一環境下の接続で メディアの価値の再発見に期待

広告主の興味関心は、広告効果の可視化である。デジタル広告が隆盛なのも効果が可視化できる利点が評価されていることが大きい。

一方でテレビは、いまだに広告主が多くの予算を投下していながら、事業に貢献する効果が十分に可視化できているとは言いがたかった。デジタル広告で起きた広告主のマインドセットは、次にテレビCMの効果のモニタリングし、その結果をバイイングに反映したいというニーズに至っていくのは当然の流れだ。

次に、テレビとデジタルを共通指標で評価・分析し、最適なバイイングにつなげたいという課題が生まれる。その先に経営指標として広告投資への検証フェーズがある。

飯塚氏は「まだ広告活動を経営の指標に直結させて評価する企業は多くはないが、いずれそのニーズは確実に出てくる」と指摘する。こうした一歩先の企業課題も見据え、AaaSのサービス群は開発されているのだ。

またプランニング、モニタリング、バイイングが同一環境下で接続されることによる副次的な効果としてメディア企業が自身の価値を再発見することも考えられる。「広告効果が可視化されることによって、メディアの価値が改めて見直されると思う。これにより広告メディアとしての価値を高めるサポートも行っていきたい」という。

さらに飯塚氏も「広告主が効果を把握できれば、従来の取引指標に留まらない独自の視点で、必要な広告枠を判断できるようになる。広告主の求めるKPIの効率化を実現しながら、媒体社側視点での価値を上げていけるような仕組み。『PDCAを回す』と言うと、テレビのビジネスモデルを改悪する運用の方向へ進んでしまうのでは不安を感じる方もいるかもしれないが、私たちは広告主にとってはもちろん、メディアにとってもWin-Win-Winになる世界の構築を目指している」と話す。

テレビ局向けに説明するにあたり、「運用型」の定義づけから行った。テレビCMの運用はデジタル広告の運用ほど、PDCAサイクルをスピーディーに回すことができるわけではない。そうした手法は、現在の放送の仕組みでは確立されておらず、当面はプランニングとバイイングまでの円滑化や素材の用意からオンエアまでの高速化といった実務的な面の改善を「運用型」と位置付ける。

テレビ広告に関しては、プランニングとモニタリングとバイイングが連動することが十分に「運用型」といえる。GRPだけで評価ができないのであれば、クライアントの求めるWebサイトの来訪率なども組み合わせながら、効果的な枠の提案も行っている。

AaaSのシステム基盤と 統合メディアDWHの提供価値

博報堂DYグループがAaaS構想を実現できたのは、保有するデータの種類と量によるところが大きい。それらのデータをより有効に活用するための取り組みでもある。

増え続けるデータを活用するには、そのためのソフトウェアやロジックが必要だ。それらを全て自社でつくるためには相当な投資と人的パワーが求められる。博報堂DYグループは全体をカバーするデータ基盤を構築し、個別に業種や目的別にカスタマイズできるサービスを提供し、あらゆる領域で優位性のあるものをつくりあげた【図表3】

図表3 データ基盤の活用環境

優位性の中心となるのがシステム基盤となる統合メディアDWHだ。テレビ、デジタル、テレデジの各種媒体社データや3rdパーティーデータ、さらには博報堂DYグループが長年研究を行ってきた生活者データなどを統合メディアDWHに集約した。

実際にデータを活用する際にはオリジナルのユーザーインターフェースをフルスクラッチでツール化することも可能だ。また、他社やクライアントの環境にデータをフィードし、利用者が使いやすい形で見ることもできる。

状況のモニタリングはダッシュボード化することで、データを扱う人が同じ画面を共有し評価・活用できる形にした。これにより、広告会社とクライアントが同じダッシュボードを見ながら、広告施策を評価・検証することで、より最適な施策を実施できる。運用実績が増えれば、AaaSのデータ基盤はさらに進化し精度を高めていくのだ。

博報堂DYメディアパートナーズ
メディアビジネス基盤開発局長
藤本良信氏

博報堂DYメディアパートナーズ
AaaSビジネスプロデュース局長
飯塚隆博氏

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