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脱 大量生産・大量消費 サステナブル・マーケティング

Z世代が見ているのは企業のお金の使い方より、時間の使い方

小島 雄一郎氏(電通)

Z世代と呼ばれる1990年代半ばから2000年代ごろに生まれた世代は、世界的に見て、上の世代よりも社会意識が高いと言われている。日本での実態はどうなのか、また消費にはどのような影響があるのか、電通若者研究部に所属する小島 雄一郎氏に話を聞いた。

若者の社会意識と消費は別問題に考える

日本の若者の社会意識は高いとは言えません。背景には、諸外国に比べ日本ではそもそも若者の人口比率が低いことが挙げられます。「どうせ社会に声をあげても、人数の少ない若者の意見は通らないだろう」と半ば諦めてしまっている面があるのは低い投票率を見ても明らかでしょう。

日本人自体の社会意識は東日本大震災をきっかけに高まったと言われていますが、内閣府の世論調査によると現在は横ばいか、やや減少傾向にあるのが現実です。

図表1 社会現象が変えられるかという調査結果
日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査。社会問題への関与や自身の社会参加について、日本の若者の意識は諸外国と比べて、相対的に低い。
※内閣府「平成26年版 子ども・若者白書」参照

ひとつ象徴的なエピソードがあります。3年前、電通若者研究部では当時、注目されていた若者の社会意識に着目し、大学内の売店でフェアトレードチョコレートを販売しました。フェアトレードの意味・意義を訴えたPOPを作成して販売しましたが、結果はその大半が売れ残ってしまったのです。余った在庫をどうしようと苦慮した結果、簡単なラッピングを施して「プレゼントに最適!」と銘打った販売をしました。すると売上は驚異の20倍に。在庫はすぐに完売しました。

若者と社会意識を語る際、「若者にとっての社会とはどの範囲か?」を考える必要があります。世界の問題はなんとなく知っていても、まだまだ若者にとっての社会は身近な友人まで、という現実があります。また、意識と消費も分けて考えなければいけません。壮大な社会意識を口にした若者が、社会のために自分のお金や時間を使うか?はまた別の話です。

そんな中、若者の中では新たな習慣も生まれています。最新の電通若者研究部の調査では、友人からもらったプレゼントに対して相手へのお礼も兼ねてInstagramにアップするという習慣が確認されました。

モノにモノでお返しをするのではなく、相手のためにしっかり時間と手間をかけ、相手の周囲にも伝わるようにお礼を表現するこの習慣は、若者の新たな社会意識、消費意識の表れとも言えるでしょう。

大学売店でのフェアトレードチョコ。左の社会意義を打ち出したものより、右のプレゼント用にラッピングしたものが販売に影響した。

テレビは長いのであまり見ない 時間がかかることへの嫌悪

そもそも、若者の消費について語る際、私たちはつい「消費=お金の話」と捉えがちです。しかし今の若者は「お金がかかること」よりも「時間がかかること」を嫌がっているのをご存知でしょうか。

例えば...

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