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カンヌライオンズに見る、いま世界が評価するクリエイティブの共通点

立谷 光太郎氏(博報堂)

世界の広告、コミュニケーションの潮流が読み取れる「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」。本稿では、PR部門で審査員を務めた博報堂の立谷光太郎氏が、審査作品の今年の潮流を解説する。社会的な流れを捉えることが必要なPRの部門において、どのような傾向があったのか。

2019年6月17~21日の期間、フランスで開催されたカンヌライオンズ。

社会課題が求めるクリエイティビティ

私は、今回初めてカンヌライオンズにPR部門の審査員として関わりました。オンライン審査員でしたので、本審査ではなく事前審査として300弱の作品を審査しました。これらの作品の審査と、カンヌでのショートリストの作品や本審査の審査員との意見交換をした中で、私なりに思ったことを紹介したいと思います。

社会を変えなければ評価されないようになっている

PR、つまりパブリックリレーションズはもともと市場ではなく社会を対象に、リレーションを通じて社会の中で合意を形成するものです。市場と社会の大きな違いは、市場には商品・サービスを利用する層がいますが、社会にはその前にその商品・サービスの存在そのものに賛成・反対といった多様な意見をもった層がいることです。

PRの世界では、様々な意見をもった層の賛同を得ることで商品・サービスが社会に受け入れられる状態をつくらなければなりません。それが社会との合意形成です。今回のカンヌでは、この社会との合意を得ることで、社会を変えることができたか?が、大きな評価視点でした。

視点は3つ、①ルールを変えたか(法律など含む)? ②行動や態度を変えたか? ③社会的な認識を変えたか?です。

その上で、アイデアや施策の面白さ、新しさを見るというものでした。審査委員長によると、これまでのような広告の後追い的なパブリシティ、メディアとしてのPRとは一線を画し、社会課題の解決を強く意識した審査視点となったようです。

社会を変えるネット世論の力

今回の審査を通じて改めて目の当たりにしたのはネット世論の力です。これまでのPRのプロフェッショナルたちは、社会との合意を得るキーパーソンとして新聞記者をはじめとしたジャーナリスト、学者、有識者、評論家といったオピニオンメーカーと言われる人脈を持っていました。そして、彼ら、彼女らがテレビや新聞で記事や見解を発信し、視聴者、読者を通じて世論となり、社会の中での合意が形成されていきました。しかし、今は違います。

ネットの広がりにより、多様なオピニオンメーカーと多彩なネットコミュニティによってニュースとともに様々な意見が一気に広まります。このネットの世論が人を動かし、ネットを通じて人と人がつながって行動が広がり社会を変える力になっています。従来のPRのプロフェッショナルは、この変化の中で社会とのリレーションを通じた合意を得ていかなければなりません。

今のように発展したネット社会の中でPRを進めるためには、多様多彩な意見を賛同に変えていく必要があります。そのためには一部のジャーナリストや有識者が理解し、賛同すればよいのではなく、誰もがわかるように情報を発信していかなければなりません。そして、そこでより多くの賛同者を集めることが、ルールや行動、社会的な認識を変える力になります。

カンヌのPR部門では、社会視点でのクリエイティビティと従来のPRの掛け算によって、ネットを含めて世論を動かし、社会を変えた作品が多くの賞を獲得していました。

PRグランプリは"本×タンポン"のアイデア

ドイツではラグジュアリーブランドへの税金が7%でキャビアや絵画などは7%です。一方で女性の日常的な生理用品であるタンポンはなんと19%。これは1963年に男性だけの議会で決められたルールで、この税率に抗議した作品がPR部門でグランプリを獲得した「タンポンブック」です。

本の税率は7%。ならばタンポンを本に入れて「タンポンブック」として売れば7%でタンポンが売れる、というものです。書籍としてはイラスト入りでのタンポンの正しい使い方紹介とタンポンの税率が19%であることに対する意見が書かれています。これは、あっという間に売れました。

そして、この本を購入した女性層を中心にネットを通じて税率に対する怒りの声が広まります。一般の女性市民だけではなく、ジャーナリストから国会議員までネットを通じて怒りの声を上げることで新聞やテレビ報道、議会にまで取り上げられました …

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