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脱 大量生産・大量消費 サステナブル・マーケティング

いま、マーケティング活動にサステナビリティが求められる理由

青木茂樹氏(駒澤大学)

MDGsやSDGsなど、サステナビリティへの取り組みは産業界においても注目され続けてきた。その変遷から、マーケティングがサステナビリティを牽引すべき現在の状況について、駒澤大学の青木茂樹教授が解説する。

サステナビリティへ向けた世界的な潮流

世界では温暖化や水害などの異常気象の対策が求められ、その一因としての炭素の排出量の削減が進んでいます。近年はマイクロ・プラスチックが海洋に大量に滞留し、これに有害物質が付着したものを魚が取り込むことで、食物連鎖を通じた人体への悪影響も危ぶまれています。その他にも世界の児童労働や貧困地域での低賃金をはじめとした労働環境問題、ジェンダー平等やLGBTQ+への対応など、企業の経営環境を巡るサステナビリティの問題は大きくなっています。

そこで、People・Planet・Profitと言われるトリプルボトムラインやESG(Environment, Social, Governance)投資のように、企業には環境的側面、社会的側面、経済的側面のバランスを取ったサステナブルな経営モデルが求められているのです。

こうした環境問題やサステナビリティへの警鐘は、古くは1962年のレイチェル・カーソンの『沈黙の春』などがありましたが、世界的かつ継続的な取り組みの始まりとしては、1992年のリオにおける「環境と開発に関する国際連合会議」が契機でしょう(図表1)

図表1 サステナビリティへ向けた世界的な潮流

出所:筆者作成

そこから発展して1995年にはWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)、1999年には国連グローバル・コンパクトなど、企業を中心としたサステナビリティへの取り組みが議論され、さらに2000年前後に投資機関の評価としてのDow Jonesのサステナビリティ・インデックスやロンドン証券取引所の子会社のFTSE4Goodのインデックスなどが始まりました。2015年には2000年のMDGs(Millennium Development Goals)から発展したSDGs(Sustainable Development Goals)とパリ協定が合意されたのです。

こうして国際的に数値目標が掲げられ、企業のサステナビリティへの取組みの事業評価がなされるようになり、特にグローバル企業においては、その対応が急速に求められています。

日本は、SDGsの世界ランキングにおいて2017年に11位となり、その評価の向上を目指して日本政府も経団連とともに急速にSDGsの17目標への取り組みを進めるようになりましたが、2018、2019年と15位に終わりました。日本は、「4.質の高い教育をみんなに」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」では高い評価を得ていますが、「5.ジェンダー平等を実現しよう」「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」という評価は低いままなのです。

また世界162カ国のSDGsランキングにおいて、1位デンマーク、2位スウェーデン、3位フィンランドと北欧を先頭に欧州が上位を占めています。なおアメリカは35位、中国は39位となっており、GDPの高い先進国が必ずしも高い評価を得ているわけではありません。

企業活動におけるサステナビリティの必然性

こうした潮流に対して、日本の経済界ではこれをどのように取り上げてきたのでしょうか。ここに「日経四紙」において、「サステナブル関連(サステナビリティを含む)」、もしくは「持続可能」という言葉の年毎の掲載件数を調べてみると(図表2)、2000年から各々3倍以上の掲載数へと増加しており、企業においてこの考え方が急速に広まっていることがわかります。

図表2 「日経四紙」のサステナブル関連の記事掲載件数

出所:日経テレコンにより筆者作成

そこで図表3のように、企業が左の投入(input)から右の産出(output)を生み出すフローとステークホルダーの関係を表してみると、従来、環境問題や社会問題といった問題に強く影響を与えるのは、「監督官庁」や「メディア」という上からの指導や要請によるものが挙げられます …

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