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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

ソーシャルメディア時代の感性 コピーは、ブランド・アクティビズムへ

橋口幸生氏(電通)

今月のテーマ:ソーシャルメディア時代に効く!グラフィック広告のクリエイティブディレクション

動画やSNS時代の今、新聞、ポスター、雑誌など、グラフィック広告のクリエイティブはどのように考えればよいのでしょうか。グラフィック広告は、その伝達スピードの速さから、使い方次第で強力な効果を発揮します。デジタルではない、グラフィック広告だからこその強みを解説します。

    グラフィック広告における、コピーワークの基本

  • ソーシャルメディア時代は「足し算発想」で考える。
  • ブランドと社会の関係性を問う「ブランド・アクティビズム」。
  • AIにはできない、ディスカッションを巻き起こす。

動画でもアプリでもない!?今こそグラフィック広告の理由

いきなりですが、この特集を読んでいるあなた。お目が高いです。宣伝担当者が今、もっとも注目すべきなのは、動画やアプリではありません。グラフィック広告です。理由は簡単。ソーシャルメディアが人々の生活に浸透した結果、グラフィック広告の重要性が、かつてないほど増しているからです。

最近、バズを起こした広告を思い出してください。大半は新聞やポスターなどのグラフィック広告でした。一方で15秒や30秒のCMがバズになった例って、あまり思いつかないですよね(もちろん、テレビCMはテレビで視聴されることを目的にしたものなので、別にバズを起こしていなくても問題はないのですが)。グラフィック広告は目の前の読者に加えて、ソーシャルメディア・ユーザーと極めて効率よくエンゲージすることができるのです。活用しない手はありません。

グラフィック広告がソーシャルメディアに効く理由は、その伝達のスピード感にあります。CMのように15秒や30秒の間、グラフィック広告を見続ける人はいません。バンパーCMの6秒間ですら、あやしいと思います。新聞をめくり、街を歩くほんの一瞬でコミュニケーションを完結させないといけない。その点、グラフィック広告は情報を伝えるスピード感こそが特徴なのです。

そして、ソーシャルメディアの特徴もスピード感にあります。つまりは、スピード感という共通の特徴があるからこそ、グラフィック広告がソーシャルメディアに効くのです。

Twitterユーザーの6割は、リンクつきツイートのリンク先を見ないでリツイートしているそうです。メインユーザーである若者たちも、凄まじいスピード感で情報を処理して毎日を生きています。1980年~90年代生まれの集中力の持続時間は15秒、95年生まれは6秒とも言われています。この環境でじっくりとストーリーを語るのは至難の技でしょう。しかし、グラフィック広告を何枚かタップさせるのは比較的簡単です。だから活用しない手はないのです。

グラフィック広告=パンク 心意気で、社会にモノ申す

ソーシャルメディア上のコンテンツと聞くと、動画のイメージを持つ人が多いと思います。確かに、華麗なバズムービーの数々を見たクライアントから「ああいうものをつくりたい!」と依頼をいただくことも、少なからずあります。確かに動画は、全てがうまくいけば効果絶大です。

しかし集中力=6秒の世界で、数分間も尺がある動画を見てもらうのは並大抵のことではありません。苦労して完成までこぎつけても、そこには屈強なライバル動画たちが待ち受けているのです。ハリウッド超大作の予告編から、監視カメラがとらえた珍騒動、かわいい子猫ちゃんまで。あなたの動画は、これらをなぎ倒して、視聴者のもとにたどり着かなくてはいけないのです。企画や制作から公開、PRまでの多額の費用と時間がかかるのは言うまでもありません。

音楽にたとえると、動画はフルオーケストラのようなものです。カネ、人手、時間、場所、莫大な手間がかかります。その分、ここぞというタイミングで、正しい内容でやれば、絶大な効果を発揮します。

一方、グラフィック広告はパンクです。お金や時間がなくても、心意気があればオッケー。フットワーク軽く、社会にモノ申すことができます。中でも撮影やCGがコスト的に無理でも活用できるコピー原稿は、さらに過激なハードコア・パンクと言えるかもしれません。

次にソーシャルメディア時代におけるグラフィック広告のコピーライティングとは、どうあるべきなのか?事例から考えていきたいと思います。

ソーシャルメディア時代は「足し算」で考えよう

まずは私の手がけた事例です。池波正太郎、さいとう・たかを両先生による本格時代劇画「鬼平犯科帳」は、昨年25周年を迎えました。記念すべき年に、若者に作品の魅力をアピールするためのポスターをつくりました(図1)。鬼平を少女マンガ、ラノベ、BL、ハリウッド映画という若者に人気のジャンルで表現した企画です。コピーの面では、足し算の発想でつくっています。

図1 「鬼平犯科帳」をライトノベル風のポスターに。
細かい共感ポイントを多数盛り込んでいる。

●少女漫画ファンには「お江戸のスパダリに萌えませんか」
●ラノベファンには「俺の剣がチート過ぎて今日もお江戸が平和な件」
●BLファンには「侍ジャンルを見逃すな!」
●ハリウッドファンには「Edo city is burning!」

などなど …

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