今月のテーマ:コンセプトのつくり方
インターネット広告の発展によって生活者が触れる情報量が劇的に増えた昨今。埋没してしまわないために、コンセプトづくりにおいては商品・サービス独自の魅力、そして生活者にとっての価値をどう定義するかが、これまで以上に重要になってきています。そこで、生活者にとっての価値を捉えたコンセプトを抽出するノウハウ、チームや生活者へコンセプトを定着させていく際のポイントなど、宣伝担当者が意識するべき心構えや取り組み方を解説します。
- コンセプトは「生活者が感じる価値の仮説」
- コンセプトに詰まったときは「この製品の存在価値は、生活者の○○を△△にすることである」の構文で考えてみる
- 「時代を映した広告が機能する」。人々がどのような感情を抱えながら生きているのかを考慮することが重要
「コンセプト開発」では、ここがポイント!
そもそも、コンセプトの本質的な意味とは何か?
現在、コミュニケーションは複雑化しています。メディアの多様化のみならず、生活者の行動も嗜好性も、もちろん消費行動も、一括りにできない状況です。
このような環境下において、広告制作に携わる私たちは往々にして「変化」に目を奪われがちです。たとえば、若者がSNSを多用するようになると、SNSでバズる企画を考えてしまいます。競合他社がメディアを上手に使った企画を実施すると、より注目されるキャンペーンを欲してしまうこともあるでしょう。
しかし、ここで立ち止まって考える必要があります。
「自分が担当しているブランドにとって、本当に必要なコミュニケーションとはどんなものだろうか?」
こうした本質的な問いに対して、適切かつ有効な解決策を導いてくれるのがコンセプトです。なぜなら、コンセプトとは、(図)に示したように全てのマーケティング活動の中心に位置する肝であるからです。
では、コンセプトとは一体何なのでしょうか?
おそらくコンセプトという言葉を知らない方はいないと思います。日常的に使っていたり、まさに今、コンセプトについて考えている方もいるかもしれません。しかしながら、「コンセプトとは何か?」と問われた際に、明確に答えられる人は限られているはずです。コンセプトとは、当たり前のように使われるあまりに、その本質的な意味を理解されていない言葉かもしれません。
本パートでは、コンセプトとは一体何なのか、そして、どのようにコンセプトまでたどり着けばいいのかという道のりについて、説明をしていきます。
コンセプトとは「価値の仮説」である
企画書に目を通すと、必ずと言っていいほど、コンセプトという言葉が現れます。なかには、製品コンセプト、マーケティング・コンセプト、コミュニケーション・コンセプト、クリエイティブ・コンセプトなど、コンセプトが乱立しているものも散見されます。
しかし、本来、ひとつのブランドに対して、コンセプトはひとつしか存在しないはずで、全ての活動がコンセプトから派生しているべきものです。その結果、製品からコミュニケーションまでがシームレスに接続され、統合型マーケティング・コミュニケーション(IMC)が機能するわけです。その一貫性を支配するものこそが、コンセプトなのです。
製品やサービスといったブランドは、それ単体で世の中に存在しているものではなく、生活者に使われるために世の中に生み出され、生活者に使われることでその役割が達成されます。このように、ブランドと生活者の関係性を中心にマーケティングが設計されている以上、全ての活動の起点となるコンセプトは、両者の接点以外から生まれようがありません …