広告マーケティングの専門メディア

企業・競争から共創へ ビッグデータ活用の新境地

改正個人情報保護法の施行から半年、「匿名加工情報」活用に企業は及び腰?

坂下哲也(日本情報経済社会推進協会)

近年、企業のマーケティングにおいてはパーソナルデータをはじめ、さまざまなデータが活用できるようになってきました。なかでも「匿名加工情報」が使えるようになったことで、企業のマーケティングの可能性は大きく広がっていくのではと期待が高まっています。とは言え、実際に活用を進めていく段階では、さまざまな課題もあります。改正個人情報保護法が施行されて約半年、企業は「匿名加工情報」をどの程度活用できているのでしょうか。

経済活性化が期待されるも事業者側の動きは鈍い?

10年ぶりに個人情報保護法が改正(以下、改正法)され、5月30日に全面施行になった。改正法では、近年のビッグデータ、AI(人工知能)に代表されるデータ利用による経済活性化を視野に入れ、本人の同意なく個人データの利用を実現する「匿名加工情報」※1が法定された。

これまで事業者が取得する個人情報については、利用目的を特定し、明示することが求められ、新たなサービス設計で利用するなど異なる目的で利用したい場合には新たに同意などが必要とされることから、データ利用を検討する事業者にとってハードルが高いものであった。

その中で、匿名加工情報が定義されたことは、そのハードルを下げ、データ利用による新たなサービスの創出など経済活性化が期待されるものである。一方で、匿名加工情報が定められたにも関わらず、具体的なデータ利用を宣言する事業者は少なく、データ利用を通じた経済活性化に疑問を呈する議論も散見される。

当協会では、2005年より認定個人情報保護団体として活動を行い、2007年度より匿名加工情報の調査研究を進めているが、改正法施行後、データ利用に関する相談が増加傾向にある。

相談の多くは過日、交通系ICカードデータの利活用で社会的に耳目を集めた(炎上した)※2ことから、利活用を検討しているものの、躊躇しているという内容だ。

サービスの多様化・個人化(その人に合ったサービスを提供すること)が進む今日、事業者にとってパーソナルデータの利用は必要であり、それによって、私たち消費者が受ける恩恵(サービスレベルの向上など)も増えることが期待される。

匿名加工情報の利用を検討している事業者の多くが、個人のプライバシーを侵さずに、データ利用を促進し、経済活性化に貢献する方法とは何なのか、その解を探しているのが現状ではないだろうか。

本稿は、昨今の事業者相談を通して、匿名加工情報の利用についてのひとつの考え方を示すものである。

データ利用のコスト低減がイノベーション創出には不可欠

1981年にTCP/IP(インターネット・プロトコル・スイート)が標準化され、TCP/IPを採用したネットワーク群を世界規模で相互接続するインターネットという概念が提唱され、1980年代末から営利目的のISP(インターネットサービスプロバイダー)が立ち上がり、今日に至っている。

当初のインターネットは、必要な情報のディレクトリーをブラウザで指定する必要があり、必要な情報を手に入れるために、一定の知識が必要とされた。その後、Googleを端緒とし、インターネット上のさまざまな情報を整理し、今日では日本語で検索するだけで必要な情報にアクセスできる環境が整っている。

Googleなどの出現は、事業者や個人にとって、データへの到達コストを圧縮し、それにより投資を他に振り分け、イノベーションを起こすきっかけを創出し、経済活性化の重要な要因になった。その後、国や行政機関の保有するデータの利用(オープンデータ)や、センサーなどによる収集されたデータの利活用(IoTなど)の議論や具体化につながっている。

当協会では、2007年度に経済産業省施策(情報大航海プロジェクトなど)より、匿名情報の調査研究を開始している。当時は匿名情報といわれ、個人とは紐づかない状態に加工した情報を指していた。当時、事業者からの相談において多く確認されたのは、「これまで取得した個人情報(実際にはデータベースなどに格納した個人データ)を、新たなサービスを実施する際の効果検証のために使いたい」というものであった。

しかしながら、個人情報保護法によって、「目的を明示して個人情報を取得すること」を求められることから、新しいサービスは目的が異なるため、再度、利用者に通知をし、場合によっては同意を取る必要もあり、利用の課題として指摘されていた。その状況を打開するために匿名情報というものが考案されたのであった。

当協会では、カナダのオンタリオ州の小児病院CHEO(Children's Hospital of. Eastern Ontario)が匿名加工を行い、事業者へデータ提供している実態を調査し、現地ヒアリングを行い、「k匿名化手法」を知った。その後、NTTセキュアプラットフォーム研究所などと「k匿名化アルゴリズム」の開発を行った。

k匿名化アルゴリズムとは、データセットの中に、同じ属性を持つデータを複数作成する(ダミーデータを故意に挿入することもある)ことによって、データがひとつになる(個が識別される)状況を回避するものである ...

あと62%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

企業・競争から共創へ ビッグデータ活用の新境地の記事一覧

企業・競争から共創へ ビッグデータ活用の新境地の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する