テレビCMからソーシャルメディアの投稿まで、消費者との接点が格段に増えたことで、おのずと広告・コンテンツ制作が必要とされる場面も、そのバラエティが広がっています。担当者自らに制作スキルが求められるもの、外部のパートナーのディレクション力が求められるものがありますが、本特集では双方を織り交ぜながら、特にアウトプットの完成度を高める実践的ノウハウ・考え方を解説していきます。
インターナルコミュニケーションの基本
「働き方改革」が叫ばれる中、企業の制度だけでなく、社内におけるコミュニケーションも日々変化しています。こうした状況の中で注目度が高まっているのが社員に向けたコミュニケーション「インターナルコミュニケーション」です。インターナルコミュニケーションが注目を高めている背景や、社内イベント企画のポイントや、コミュニケーションツールの活用法などを解説します。
- 目的や伝えたいコンテンツによって、コミュニケーションの手段の使い分けるべし。
- 「伝える」ことが目的なのではなく、「社員の行動を促す」ことが最重要。
- 従業員の主体的な行動を引き起こすためには、「左脳」と「右脳」両方からのアプローチが必要。
インターナルコミュニケーションのここがポイント!
全社総会に運動会、社員旅行 今、社内イベントが活発化する理由
近年、「インナーブランディング」や「インナーコミュニケーション」の取り組みの一環として、全社総会や社内運動会、社員旅行などの社内イベントを実施する企業が増えてきています。このような社内イベントを実施する目的としては、「社員の絆を深める」「社員の一体感を高める」などが主要なものとして挙げられますが、なぜ今このような取り組みが活発になっているか、もう少し深く考えてみたいと思います。
今、イベントを含めた社内コミュニケーション活動が盛り上がりを見せている理由は大きく2つあります。ひとつは、外部環境の変化に適応していくことの重要性が高まっていることです。企業活動のグローバル化、ITを中心とした技術革新など企業を取り巻く外部環境が急速に変化していることは言うまでもありませんが、当然、企業の経営戦略・事業戦略などもそれに合わせて変化していく必要があります。
その際、「これから会社はどこを目指していくのか(WHAT)」「どのようにそこに到達していくのか(HOW)」「なぜそのような考え方に至ったのか(WHY)」がしっかり伝わっていないと、従業員は環境変化の早さに翻弄されてしまい、描いた戦略は実行力を欠き"絵に描いた餅"に終わってしまいます。外部環境の変化が早いからこそ、それに適応していくための戦略・方針を適切に従業員たちに伝えていくコミュニケーション活動の重要性が増しているのです。
もうひとつは、企業の内部環境変化に対する適応です。日本国内の労働人口の減少、ダイバーシティや働き方改革の推進など社会的な流れに伴い、「企業」と「従業員」の関係性や、従業員個人の「会社」や「仕事」に対する意識や考え方が大きく変化してきています。
人材不足や採用難のトレンドが間違いなく続く中で、企業が優秀な人材を確保し続けるためには"従業員に選ばれる魅力的な存在"であることがより一層求められますが、それを実現するためには、企業のビジョンや理念・風土に対する共感を生み出すことが必要不可欠です。個人の労働価値観が変化していく中で、社内コミュニケーション活動によって従業員を惹きつけることの重要性も高まってきているのです。
単純に「絆を深める」「一体感を醸成する」といった理由ではなく、社内外の急速な環境変化へ適応していくために、企業と従業員の関係を"チューニング(同調)"させていくような社内コミュニケーションが求められていると言えるでしょう。
コミュニケーションの目的は社員の行動を促すこと
本記事のテーマは従業員を対象とした「体感型イベント」ですが、イベントというのはあくまで社内コミュニケーション手段のひとつにすぎません。イベントの具体的な話に入る前に、そもそも社内コミュニケーション活動全般における大切な考え方について説明したいと思います。
「コミュニケーション」という言葉をそのまま捉えると「通信」「伝達」という意味合いになりますが、企業の社内コミュニケーションにおいては、あくまで"社員の行動を促す"ために何かを伝えるという考え方が前提になります。
もう少し具体的にお伝えすると、会社(組織)を「Aという状態(現在)からBという状態(未来)に変えていく」という具体的な"あるべき姿"があり、その"あるべき姿"を実現していくための「行動」を社員に対して促していくということになります。「伝える」こと自体は目的ではなく、「伝える」ことによって「社員の行動を促す」ことが最重要であることを忘れてはいけません。
社内コミュニケーション活動において一般的によく使われる手段としては、体感型イベント、社内報(紙・Web)、イントラネット、メルマガなどが代表的ですが、それ以外にも、社内研修(次世代幹部、管理職など同一属性を対象に何らかのメッセージを伝える)、ES調査や360º評価(社員の声を吸い上げる)、最近増えてきたフリーアドレスを取り入れたオフィス環境(組織の枠に囚われないコミュニケーションを活性化させる)なども社内コミュニケーション施策の一環と捉えることができるでしょう。
目的や伝えたいコンテンツによって、適切に手段の使い分けをしていくことが重要です。
右脳に訴えるイベントは「共感」や「行動」を生み出す
それでは、様々ある社内コミュニケーションの手段において、体感型イベントがもつメリットとはどのようなものでしょうか。先程、従業員向けのコミュニケーションの目的は「社員の行動を促す」ことだとお伝えしましたが、体感型イベントの最大のメリットは「行動につながるエネルギーを生み出す」ことだと言えるでしょう。そもそも「行動」に至るプロセスには、「(伝えたいメッセージやあるべき姿を)認知する」⇒「理解する」「共感する」⇒「行動する」という3つの段階があります。
例えば、新しい事業戦略を伝える場面を考えた時、それを従業員に「認知させる」ことだけを考えるのであれば、社内報やイントラネットなど、詳しく論理的な説明が可能であり、何度も読み返せるようなコミュニケーション手段を用いる方が適切かもしれません。ただ、実際にそのようなシーンを思い浮かべると、それだけで受け手の従業員が内容に共感し、行動に移すに至らないことは想像に難くないのではないでしょうか ...